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2024/06/24
M&A市場で高評価を獲得する企業とは 企業価値を算出する3つの方法
企業の評価が高ければ、市場で買い手がすぐに見つかり、スムーズなM&Aが実施できます。
では具体的にM&A市場で高評価を受ける企業とはどのようなものでしょうか?
そこで今回は、企業価値を算出する方法について解説します。
(1)企業を評価する3つの方法
M&A市場では、当然ながら企業や事業の価値が高ければ高いほど、よりよい条件の買い手が見つかりやすくなります。M&A市場で用いられる企業価値の評価方法は主に以下の3つがあります。
- 年買法
年買法とは、企業の時価純資産にのれんを加算して算出する評価方法です。のれんとは、M&Aによって会社を買収した際の金額と買収される会社の時価純資産の差額のことで、営業権とも呼ばれます。年買法では、のれんは営業利益の1年〜3年分とされることが多いです。
年買法のメリットは、普段目にしている決算書の情報を元に企業評価を算出するため、中小企業オーナーの皆様にもわかりやすい点が挙げられます。一方で、のれんの年数を何年で計算するかによって評価が大きく変わったり、不動産を保有している会社の場合、事業用不動産の時価が企業価値に大きな影響を与えることもあり、投資回収の観点からは採用し辛いという意見もあります。また、あくまでも過去の経営成績による評価であり、将来的な価値までは評価することはできません。 - マルチプル法
マルチプル法とは、類似上場企業の株価などを参考に、EBITDA(「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の略で、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)などに一定の倍率をかけて価値を求める方法です。上場株式の市場における価値を反映しているため、年買法と比較すると客観性が高いと言われています。また、EBITDAを使用すると、キャッシュフローをベースに算出しているため、買い手は投資回収に必要な年数を検討しやすく、近年ではマルチプル法で検討する買い手企業も増えています。一方で、上場企業で類似の企業が見つからない場合は算出が困難になります。また、不動産などの含み益は反映されないので、不動産を多く所有している場合は企業価値が時価純資産を下回る可能性があります。 - DCF法
DCF法(「Discounted Cash Flow」の略で、将来のフリー、キャッシュ、フローを一定の資本コストで割り引くことにより、企業価値又は株式価値を算定する評価手法)とは、企業の将来に生み出すキャッシュフローを現在価値に割り戻して算出する評価方法です。DCF法は他の評価方法と異なり、将来的な成長を企業評価に加味することができますが、キャッシュフローや事業計画の内容が不確実である場合は、企業評価の精度が低くなる危険性があること、中小企業においては精緻な事業計画を作成していることが少ないこと、わずかな割引率のズレによって企業評価が大きく変わることという様々な欠点があります。DCFは主に大企業におけるM&Aで使用されるケースが多く、事業継承を目的とした中小企業のM&Aには使用されるケースは少ないようです。
M&Aの企業価値は年買法とマルチプル法の両方で算出する
M&Aは、買い手と売り手、双方の合意によって行われます。つまり、どのような算出方法をとったとしても、お互いが納得できれば問題はありません。ですが、できるだけ正確かつ客観的な評価に基づいた方が、お互いが納得する可能性も高まります。そのため、特に中小企業の場合は、年買法とマルチプル法の両方で企業そのまま価値を算出することをお勧めします。
M&Aは、買い手と売り手、双方の合意によって行われます。つまり、どのような算出方法をとったとしても、お互いが納得できれば問題はありません。ですが、できるだけ正確かつ客観的な評価に基づいた方が、お互いが納得する可能性も高まります。そのため、特に中小企業の場合は、年買法とマルチプル法の両方で企業そのまま価値を算出することをお勧めします。
(2)企業価値=買収額とは限らない
たとえば、年買法では1億、マルチプル法では1.5億の企業価値が算出されたとします。この場合、1億から1.5億の間で話が収まるかというと、必ずしもそうとはなりません。たとえば、IT分野はM&A市場が活発なため買い手として手を挙げる企業も数多くあります。1つの売り手に対して複数の買い手が現れたら、競合し合って買収価格は上がっていきます。そのような場合、たとえ1.5億円の企業価値であっても2億円で売れる可能性は十分にあり得ます。一方で、M&A市場が停滞している分野では、評価が高い企業であってもなかなか買い手が現れず、算出された企業評価の金額以下で手放さなければならないケースもあります。
また、その業種のM&A市場がいつまでも活発であるとも限りません。たとえば、5年ほど前に調剤薬局のM&A市場がブームと呼べるほどに活発な時期がありましたが、業界再編がほぼ終了したためブームは過ぎ去り、以前よりも高い評価をする買い手は少なくなりました。
ブームが来た時にM&Aを検討し始めても、M&Aは様々な事象によって当初のスケジュールから遅れることは多々ありますので、実際にM&Aが決まる頃にはブームが過ぎ去り、当初予想していた価値よりも低い金額で手放さなければならなくなる可能性も十分にあります。
(3)「企業価値以上に高く売れる」がいいとは限らない
もちろん一般論としては、売り手としては高く売れる方がよく、買い手としては安く買えるほうがいいのは間違っていません。しかし価格にあまりこだわりすぎると、様々な弊害が発生する可能性もあります。たとえば、売り手の希望価格が1.5億で買い手の希望価格が1億だったとします。揉めに揉め、1.5億を勝ち取ったケースと、お互いに歩み寄り1.2億で成約するケースでは、売り手にとってどちらにメリットがあるでしょうか?
もちろん、時間と労力をかけて交渉し、プラス3千万円を得たのだから前者にメリットがあるという考え方もあります。しかし、揉めれば揉めた分、お互いに遺恨は残ると共に、買い手は投資回収を急がなければならなくなりますので、売却した会社の経費削減や人員カット等で、従業員の皆様へのプレッシャーが大きくなる可能性があります。
一方、後者の場合、受け取る金額は前者に比べて少なくても、お互いに納得してスピーディーにまとまった話なので、買い手との関係も良好である可能性も考えられます。引き継がれた従業員に対する要望も出しやすくなるでしょう。買い手側から顧問や相談役への就任を依頼されることがあるかもしれません。
どちらに価値を求めるかは考え方次第です。ただ、時間と労力をかけ、買い手との関係が悪化しても高い金額を勝ち取るべきかについては、十分な考慮が必要だと考えます。
(4)よいM&Aを成立させるコツは早めに検討すること
これは我々の経験則ですが、「M&Aの実施」を決めてから実際に売買が成立するまでには長いと5年ほどかかります。そして、かかる時間の大半はM&Aを行うための準備や決心をするための時間です。M&Aの手続き自体にかかる時間は、3か月から長くても1年程度です。
当然ですが、M&Aの実施を決めてから具体的な検討に入ると、成立するまでの時間はかかります。その結果、前述したようなブームが去ったり、良い条件の買い手とタイミングがあわなかったりなどで、M&Aが進まなくなる可能性があります。例えば、どんなに魅力的な買い手であったとしても、提案のタイミングで上場準備をしていたりすると、上場審査の関係で検討が出来ないケースもあります。
もし、少しでもM&Aに興味があるのであれば、検討だけでも早めに進めておけば、良い条件の話や市場のタイミングを逃すことなく、買い手と売り手のお互いが納得できるM&Aが実現する可能性が高まります。
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