- HOME
- 法務・税務・労務など会社経営に関するお役立ち情報
- ビジネス
- 法律関係
- 【今期の決算から適用】法人税に4%上乗せ!防衛特別法人税、「うちは関係ない」が一番危ない!
【今期の決算から適用】法人税に4%上乗せ!防衛特別法人税、「うちは関係ない」が一番危ない!
【今期の決算から適用】法人税に4%上乗せ
防衛特別法人税、「うちは関係ない」が一番危ない
「基礎控除500万円があるから、うちは関係ない」——そう思っている経営者ほど、今期の決算で思わぬ落とし穴を踏む可能性があります。2026年4月1日以後に開始する事業年度から「防衛特別法人税」が適用開始となり、法人税額に4%が上乗せされる新制度が動き出しました。
税額がゼロになる会社でも申告書の提出は全法人に義務づけられています。様式も変わりました。「関係ない」と思っていた会社が、準備不足のまま決算を迎えるリスクが最も高い——それがこの制度の特徴です。
本記事では、防衛特別法人税の仕組みと計算方法を整理したうえで、経営者・経理担当者が優先的に対処すべき課題を「緊急度×影響範囲」の観点から解説します。
1. 防衛特別法人税とは何か――制度の全体像
創設の背景
防衛特別法人税は、日本の防衛力を抜本的に強化するための安定財源を確保する目的で創設された「法人税の付加税」です。根拠法となる「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」(通称:防確法)に基づき、2025年度税制改正により法制化されました。
過去に東日本大震災の復興財源として「復興特別法人税」(法人税額の10%上乗せ)が課された例がありますが、防衛特別法人税はそれとは別の法律・別の目的による新設です。同様の付加税の仕組みを採用しつつも、終期が定められていない点が大きな違いです。
計算の仕組み
防衛特別法人税 =(基準法人税額 − 基礎控除500万円)× 4%
「基準法人税額」とは、所得税額控除・外国税額控除など一部の税額控除を適用する前の法人税額です。最終的な法人税額とは微妙に異なる場合があるため注意が必要です。
基礎控除は年500万円。基準法人税額がこれ以下であれば、防衛特別法人税の税額はゼロとなります。ただし、税額がゼロであっても申告書の提出義務はなくなりません。
|
基準法人税額の例
|
防衛特別法人税額
|
|---|---|
|
300万円(500万円以下)
|
0円(申告は必要)
|
|
600万円
|
(600万円 − 500万円)× 4% = 4万円
|
|
1,000万円
|
(1,000万円 − 500万円)× 4% = 20万円
|
|
2,000万円
|
(2,000万円 − 500万円)× 4% = 60万円
|
|
5,000万円
|
(5,000万円 − 500万円)× 4% = 180万円
|
適用開始タイミング――決算月によって異なる
防衛特別法人税は「2026年4月1日以後に開始する事業年度」から適用されます。決算月によって最初の申告時期が異なります。
|
決算月
|
最初の対象事業年度
|
初回申告・納付期限の目安
|
|---|---|---|
|
3月決算
|
2026年4月〜2027年3月期
|
2027年5月末
|
|
6月決算
|
2026年7月〜2027年6月期
|
2027年8月末
|
|
9月決算
|
2026年10月〜2027年9月期
|
2027年11月末
|
|
12月決算
|
2027年1月〜2027年12月期
|
2028年2月末
|
なお、初年度(2026年4月開始事業年度)は確定申告のみで足りますが、2027年4月以後に開始する事業年度からは中間申告・納付の義務も生じます。期末を待たずにキャッシュアウトが発生するため、資金繰り計画への織り込みが必要です。
2. どんな会社が特に注意すべきか
防衛特別法人税はすべての法人に申告義務がありますが、以下のような会社は特に早急な対応が求められます。
- 基準法人税額が500万円を超える企業
課税所得が約2,400万円超(中小法人の軽減税率15%を全額適用した場合の目安)になると、基準法人税額が500万円を超え、実際に税額が発生します。利益水準が高い企業ほど累進的に負担が拡大するため、今期の利益予測をもとに早めの試算が必要です。 - グループ通算制度を適用している企業グループ
グループ全体で500万円の基礎控除枠を按分する仕組みになっているため、各法人が個別に500万円を控除することはできません。グループ内の控除枠配分を早期に確定させる必要があります。 - 決算期が1年未満の法人
基礎控除500万円は月数按分となります。たとえば事業年度が6か月の法人の基礎控除は250万円です。通常よりも課税が生じやすくなる点に注意してください。 - 「申告しなくていい」と思っている税額ゼロの法人
赤字で基準法人税額がゼロの場合も、基礎控除により税額がゼロになる場合も、申告書(別表一次葉一)の提出は義務です。未提出は申告漏れとなります。 - 税効果会計を適用している企業
防衛特別法人税の導入により法定実効税率が0.8〜1.0%程度上昇します(東京都の大企業の場合、約30.6%→31.5%程度)。繰延税金資産・負債の計算に新しい実効税率を反映する必要があり、監査法人・税理士との早期協議が求められます。
3. 経営・経理への3つの影響
①法人税等の実質負担が増加する
防衛特別法人税の導入により、法人の実質的な税負担は増加します。課税所得別の目安は以下のとおりです(中小法人・概算値)。
| 課税所得(概算) | 法人税額(概算) | 防衛特別法人税(概算) | 負担増のイメージ |
|---|---|---|---|
|
〜2,400万円以下
|
〜約360万円以下
|
0円
|
影響なし
|
|
3,000万円
|
約630万円
|
約5万円
|
軽微
|
|
5,000万円
|
約1,076万円
|
約23万円
|
要注意
|
|
1億円
|
約2,320万円
|
約73万円
|
事前試算を
|
|
5億円以上
|
約1億円超
|
数百万円超
|
早急に対応を
|
多くの中小企業にとって年間影響は数万円〜数十万円程度ですが、課税所得が大きくなるほど累進的に負担が拡大します。中長期的な税負担を踏まえた資金計画の見直しが重要です。
②申告書の様式が変わる
法人税の確定申告書「別表一」の様式が変更され、防衛特別法人税を記載するための「別表一次葉一」が新たに追加されました。2026年4月1日以後に開始する事業年度の申告書は、別表一(初葉)・別表一次葉一・別表一次葉二の計3枚構成となります。
従来の感覚で申告書一式を準備すると、次葉一の添付漏れが発生しやすいため注意が必要です。税額がゼロの場合も「0」と記載して提出する必要があります。
③会計処理・税効果会計に影響が出る
防衛特別法人税の会計処理は、企業会計基準委員会(ASBJ)の「実務対応報告第48号」により、地方法人税と同様に取り扱うことが定められています。
- 損益計算書(P/L):「法人税、住民税及び事業税」に含めて一括表示(独立した科目は不要)
- 貸借対照表(B/S):期末時点で未払の場合は流動負債の「未払法人税等」に計上
税効果会計を適用している企業は、法定実効税率の再計算が必要です。税率変更の影響は「公布日(2025年3月31日)」に認識する必要があるため、2025年3月期決算以降の繰延税金資産・負債の計算に新しい実効税率を反映していない場合は早急に対応が必要です。
4. 今すぐ対処すべき4つの課題――優先順位つき
|
優先度
|
課題
|
緊急度
|
影響範囲
|
|---|---|---|---|
|
最優先
|
自社への影響額の試算
|
高
|
全法人
|
|
優先②
|
申告書様式(別表一次葉一)の確認・準備
|
高
|
全法人
|
|
優先③
|
税効果会計・実効税率の見直し
|
高
|
上場企業・大企業
|
|
優先④
|
中間申告への対応(2027年4月以降)
|
中
|
一定規模以上の法人
|
|
【最優先】課題① 自社への影響額の試算
|
|---|
|
緊急度: 高
影響範囲: 全法人
|
|
・今期の課税所得見込みをもとに、基準法人税額が500万円を超えるか確認する
|
|
・超える場合は「(基準法人税額 − 500万円)× 4%」で概算税額を試算する
|
|
・グループ通算制度を適用している場合は、グループ全体での控除枠配分を確認する
|
|
・試算結果を今期の資金繰り・予算計画に反映する
|
|
なぜ最優先なのか:「影響がない」と決めつけていても、業績が想定以上に良かった場合に納税資金が不足するリスクがあります。期中の業績見込みが固まった段階で早めに試算することが重要です。
|
|
【優先②】課題② 申告書様式(別表一次葉一)の確認・準備
|
|---|
|
緊急度: 高
影響範囲: 全法人
|
|
・自社の決算月を確認し、初回適用事業年度と申告期限を把握する
|
|
・会計ソフト・申告ソフトが新様式(別表一次葉一)に対応しているか確認する
|
|
・税額がゼロの場合も「0」と記載して提出することを社内で周知する
|
|
・2026年3月以前に開始した事業年度には別表一次葉一を添付しないよう注意する
|
|
ポイント:申告書の次葉一は別葉のため、添付漏れが起きやすい構造です。チェックリストを更新して、提出前の確認プロセスに組み込んでおきましょう。
|
|
【優先③】課題③ 税効果会計・実効税率の見直し(上場企業・大企業)
|
|---|
|
緊急度: 高
影響範囲: 上場企業・大企業・税効果会計適用法人
|
|
・防衛特別法人税(4%)を加味した法定実効税率を再計算する
|
|
・繰延税金資産・繰延税金負債を新しい実効税率で見直す
|
|
・2025年3月期決算以降の決算書で対応が必要な場合は監査法人・税理士に確認する
|
|
・税率変更の会計処理は「施行日」ではなく「公布日(2025年3月31日)」に認識する
|
|
なぜ重要なのか:実効税率の変更への対応が遅れると、決算修正が必要になる可能性があります。監査法人との調整には時間がかかるため、早期に確認を始めてください。
|
|
【優先④】課題④ 中間申告への対応(2027年4月以降)
|
|---|
|
緊急度: 中
影響範囲: 前年度の法人税中間申告義務がある法人
|
|
・2027年4月以後に開始する事業年度から中間申告・納付の義務が生じる
|
|
・前事業年度の確定防衛特別法人税額が20万円を超えた場合が中間申告の目安
|
|
・中間納付のタイミング(事業年度開始から6か月経過後2か月以内)を資金計画に織り込む
|
|
・経理システム・キャッシュフロー計画を2027年度に向けて更新する
|
|
なぜ後回しでよいか:初年度(2026年4月開始事業年度)は確定申告のみのため、中間申告への対応は少し先です。ただし資金繰りへの影響は大きいため、2027年分から逆算した計画を今から立てておくことを推奨します。
|
5. 中小企業オーナーが特に注意すべき4つのポイント
「基礎控除500万円があるから影響は少ない」——そう思っているオーナー経営者ほど、見落としがちな落とし穴があります。会社の税負担だけでなく、オーナー個人の所得・報酬設計・複数法人の管理まで、視野を広げた対応が必要です。
①役員報酬の見直しタイミングに注意
防衛特別法人税は法人税額に連動するため、法人の利益を圧縮する節税策——役員報酬の引き上げなど——がそのまま防衛特別法人税の節減にもつながります。
ただし、役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内にしか変更できません。「決算が近づいて利益が出そうだから報酬を上げよう」という対応は税務上認められず、経費計上できない部分が生じます。期首の利益予測の段階で、防衛特別法人税も含めた法人全体の税負担を試算したうえで、役員報酬額を設定することが重要です。
また、2027年1月からは個人の所得税にも「防衛特別所得税」(基準所得税額の1%)が上乗せされます。役員報酬を増やして法人税を抑えても、個人の税負担が増える構造になるため、法人と個人の双方を合わせたトータルの手残りで考える視点が必要です。
②複数法人を経営しているオーナーへの影響
グループ通算制度を適用していない複数法人を経営している場合、各法人がそれぞれ独立して500万円の基礎控除を受けられます。つまり、2社あれば合計1,000万円の控除枠があることになります。
一方、グループ通算制度を適用しているグループは、500万円の控除枠をグループ全体で按分するため、1社あたりの控除額が小さくなります。複数法人の経営形態やグループ通算の適用状況によって、防衛特別法人税の影響額が大きく変わるため、自社グループの状況を顧問税理士と確認してください。
③節税策の効果が一部限定される点を把握する
設備投資による中小企業投資促進税制や経営強化税制などの税額控除は、防衛特別法人税の計算ベース(基準法人税額)から原則として除外されています。
つまり、「税額控除を使って法人税を大幅に圧縮した場合でも、基準法人税額はその控除前の金額で計算される」という点に注意が必要です。税額控除を駆使して最終的な法人税額を下げても、防衛特別法人税の課税ベースは想定より高くなるケースがあります。顧問税理士に基準法人税額の実態を確認してもらいましょう。
④「今期は赤字だから大丈夫」は翌期に危険
赤字で法人税が発生しない年度は防衛特別法人税もゼロですが、翌期に業績が回復した場合は一気に課税対象になります。業績回復期は資金需要も高まりやすいタイミングであるため、納税資金の確保が後手に回るリスクがあります。
中小企業オーナーにとって特に注意が必要なのは、好業績期の資金繰り管理です。「利益が出た=手元に現金がある」とは限らない場面も多く、売掛金の回収サイクルや設備投資との兼ね合いで、納税資金が不足するケースが起きやすくなります。期中の業績見込みが固まったタイミングで、防衛特別法人税分も含めた予定納税額を試算し、資金計画に反映しておきましょう。
6. 申告書の変更点――「別表一次葉一」を忘れずに
2026年4月1日以後に開始する事業年度の法人税申告書から、別表一の構成が変わります。
|
書類
|
概要
|
|---|---|
|
別表一(初葉)
|
従来どおりの法人税・地方法人税の記載
|
|
別表一次葉一(新設)
|
防衛特別法人税の計算・申告(税額ゼロでも提出必須)
|
|
別表一次葉二
|
地方法人税の計算(従来の次葉に相当)
|
注意点① 2026年3月以前に開始した事業年度には別表一次葉一を添付してはいけません。誤って添付すると申告内容に誤りが生じます。
注意点② 税額がゼロの場合も必ず「0」と記載して提出します。空欄のまま提出すると申告漏れとみなされる恐れがあります。
注意点③ 会計ソフト・申告ソフトが新様式に対応しているか確認が必要です。ソフトのアップデートを確認し、対応が遅れている場合は手動での対応を検討してください。
7. 「税額ゼロだから大丈夫」は危ない
基礎控除500万円の存在から、「うちは中小企業だから関係ない」と思っている経営者・担当者は少なくありません。しかし、この考え方には大きな落とし穴があります。
申告義務は税額の有無にかかわらず全法人に課されるため、基準法人税額がゼロでも、または基礎控除により税額がゼロになっても、確定申告書の提出は義務です。「税額がゼロだから申告しなかった」では、無申告加算税のリスクがあります。
また、今期は影響なくても業績が改善すれば翌期以降は課税対象になります。毎年の業績見込み段階で、防衛特別法人税の試算を通常の法人税試算と一緒に行う習慣をつけておくことが重要です。
さらに、終期が定められていない制度である点にも注意が必要です。防衛費の増額方針は当分継続する見通しであり、制度が突然廃止される可能性は低いとみられます。長期的な税負担として事業計画に織り込んでおくべき項目です。
新税制を「知らなかった」で済まさないために
防衛特別法人税は2026年4月から始まった新制度ですが、対応が必要な内容は大きく3つです。
第一に、自社への影響額の把握。基準法人税額が500万円を超えるかどうかを確認し、超える場合は具体的な税額を試算して資金計画に反映する。
第二に、申告書様式の変更への対応。別表一次葉一の添付を忘れず、税額ゼロの場合も必ず「0」を記載して提出する。
第三に、税効果会計を適用している企業は実効税率の見直し。法定実効税率の変更は公布日(2025年3月31日)時点で認識が必要なため、未対応の場合は早急に監査法人・税理士に相談する。
制度の理解不足や申告漏れは、ペナルティにつながるだけでなく、資金繰りの想定外のズレを生みます。「大きな影響はないだろう」と放置せず、今期の決算準備の中で早めに対応を進めましょう。
防衛特別法人税の影響試算や申告書対応については、早めに税理士に相談することをおすすめします。
ミカタグループでは税理士が企業の実情に即したサポートを行っています。
お気軽にご相談ください。
【参考資料】
・国税庁「防衛特別法人税が創設されました」
・企業会計基準委員会「実務対応報告第48号」(2026年2月27日)
・財務省「令和7年度税制改正の大綱」

