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2023/03/30
税務調査よもやま話【相続編Vo.2】
「墓石と借入金」
- 上司と部下の会話
私が税務署で資産課税第一部門の統括官(管理責任者)を務めていたころのお話です。 となりの資産課税第二部門から、その部門の統括官と、税務署に配属されてまだ2年目の若い事務官との会話が聞こえてきました。もっとも、会話と言っても聞こえるのはほとんど統括官の声で、事務官の方は時々「はい。」という小さな声がかすかに聞こえる程度でした。
会話の内容は、どうやらその事務官が担当している相続税調査に関することで、かなりの調査日数を費やしているのに申告漏れや申告誤りがまったく発見できず、そのことを担当統括官が叱責しているようでした。
当時、税務署ではこの様な光景は日常茶飯事でしたのでしばらく黙って聞いていましたが、資産課税部門全体を管理する立場として相当な事務量を投下している調査案件を放置しておく訳にもいかず、改めて直接その事務官から調査の状況を説明してもらうことにしました。 - 事務官の説明
時間をおいて別室で事務官から詳しく説明を受け、調査の経緯や証拠資料等を検討しましたが、申告漏れ等をうかがわせる事実は見受けられないようでした。
それでも見落とした点はないかと思い、その相続税の申告書を改めて眺めたところ、相続財産の価額から控除する債務として150万円の銀行借入金が計上されており、その内容の説明がなかったことに気付きました。
そこで、この借入金は何のための借入れか確認したか事務官に聞いたところ、被相続人様が生前に自分の墓石を購入したときの借入金残高であるとの回答がありました。 - 債務控除の落とし穴
相続税法では、墓所や霊廟、祭具等は相続税の対象とならない非課税財産と規定されていますので、被相続人様が生前に購入した墓石は非課税となります。
また、同じく相続税法では、課税対象の財産の価額から被相続人の債務の金額を控除できると規定されていますので、被相続人様の銀行借入金の残高150万円も控除の対象となり、一見すると何も問題が無いように思えます。
ところが、この相続税法の債務控除の規定では「非課税となる墓所等の取得や維持管理に係る借入金は控除対象としない」とされていますので、この相続税の申告書に記載された150万円の借入金は「控除できない債務」ということになります。
配属2年目の事務官はこの債務控除の規定に関する知識がなかったようで、相続人様に説明して調査を終了するように指示したところ、ほっとした様子で、大きな声で「はい。」と答えました。
まとめ:ワンポイントアドバイス
✓墓所、墓石、仏壇、仏具等は相続税の非課税財産です
- ただし、祭礼や日常の礼拝等、信仰の対象となるものが対象です。
- 贈与税には墓所等の非課税規定がありませんので注意が必要です。
✓債務の内容は必ず確認しましょう
- 相続税の計算上、控除できない債務もあります。
- 墓所等の取得費用等だけではなく、保証債務など不確実な債務も控除できません。
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