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2024/01/24

税務調査よもやま話【相続編Vo.6】

税務調査よもやま話【相続編Vo.6】

『へそくり』

(1)奥様名義の預金通帳

ある相続税調査での出来事です。
その日、調査に対応いただいたのは被相続人様(亡くなられた方)の奥様でしたが、ご自宅内の財産を確認させていただく過程で、奥様名義の普通預金通帳が提示されました。 銀行名や番号などを控えてから「どの様な内容のお金ですか。」とお聞きしたところ、奥様からは「こっそりへそくりした私のお金です。」とのお答えがありました。

詳しくお話を伺ったところ、奥様は、会社役員であった被相続人様と結婚してからずっと専業主婦で、被相続人様の役員報酬から毎月一定額の生活費を現金で渡され、その中で家計をやりくりして、残ったお金を奥様の名義でこつこつ貯めてきたのだそうです。
奥様としては、ご自身が努力して家計を切り詰めた結果残すことができたお金ですので、当然にご自身の財産であるとの認識を持っておられ、堂々と「私のお金」とおっしゃったのでした。

(2)名義財産とその判断要素

ところで、相続税調査の担当者は、その財産が誰のものかを認定する場合、①誰の財産が元手か(原資)、②誰が保有し管理していたか(維持・管理)、③誰が運用し収益を得ていたか(運用・収益)の、三つの要素を総合勘案して判断します。

その結果、財産が相続人等の名義であっても実質は被相続人の財産であると認定される場合があり、このような財産を「名義財産」(預金の場合は「名義預金」)と呼んでいますが、調査の際に申告漏れと指摘される財産は、この名義財産がかなりの割合を占めています。

では、先ほどの「へそくり預金」の場合はどうでしょうか。

(3)へそくりは誰のもの?

先ほどの「へそくり預金」は、上記の三要素からすれば、①の原資は被相続人様のお金ですが、②の維持・管理も、③の運用・収益も奥様が当事者となっていましたので、奥様の財産と判断されても良いような印象を持たれるかも知れません。

しかしながら、被相続人様は家計費の管理を奥様に任せ、任せられた奥様は被相続人様のお金を預かって目的に従い消費していた訳ですので、ひと月分のお金に残金があれば、本来は翌月以降の支出に回すか、被相続人様に返金することになります。
すなわち、元手の残金や、その後生じた預金利息などの運用収益を受け取るべき人は被相続人様であることになりますので、先ほどの奥様名義のへそくり預金は「名義預金」であり、実質は被相続人様の財産である、と判断することになります。

私がそのように説明すると、奥様からは「残ったらあげると言われていたんです。」との反論がありましたが、そもそも「へそくり」という言葉は通常「内緒のお金」という意味合いが強いことに加え、奥様ご自身が「こっそりへそくりした」と説明されていたわけですので、残念ながらその反論を受け入れることはできませんでした。

なお、生前に口約束の贈与があったことを税務署に認めてもらうのはなかなか困難ですので、明確に贈与を主張するためには、例えばひと月分の生活費の残りのお金について、その都度書面で金額を特定した贈与契約を行い、その契約書を残しておくなどの方法を取る必要がありそうですが、これでは「へそくり」にはなりませんね。

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 ✓ 被相続人名義でなくとも、相続財産と認定される場合があります。
  ⇒その財産の「原資」「維持・管理」「運用・収益」を総合勘案して判断されます。

 ✓ 被相続人以外の名義の株式にもご注意を。
  ⇒夫婦間の「へそくり」は元手を出した方の財産と認定される可能性が高くなります。


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