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2024/06/13

知らないと怖い「相続登記義務化」 その内容と注意すべき点とは

知らないと怖い「相続登記義務化」 その内容と注意すべき点とは

国土交通省の調べによると、令和4年(2022年)度に不動産登記簿によって所有者が判明しなかった土地(所有者不明土地)の割合は24%(令和4年度国土交通省調べ)にも及んでおり、今後さらなる増加が予想されています。この問題を解消するため不動産登記法が改正され、令和6年(2024年)4月1日より相続登記の申請が義務化されます。今回は、この法改正の内容と、それによって何が変わるのかについて解説します。

(1)企業を評価する3つの方法

これまで、相続登記や住所変更時の登記申請は任意でした。もちろん、売買をする場合には登記が必要ですが、所有している限りにおいては登記がなされなくても大きな問題は起きません。また、登記申請にはそれなりの費用や書類作成の手間がかかるため、不動産を相続しても名義変更の申請をせずそのままにしている相続人も多数いました。
しかし、その状況が長く続き、祖父母から親、そして子どもへと不動産の相続が引き継がれていくうちに、その土地の所有者が誰なのか登記簿を調べてもわからない所有者不明土地(※1)が日本全国に生まれる結果となりました。
近年、この所有者不明土地の増加が大きな社会問題になっています。管理されないまま放置された土地は、周辺環境や治安の悪化を招きます。また、再開発を進めようとしても、所有者が不明であれば土地の買収も進みません。このような所有者不明土地によって生じる数々の問題を解消するため、不動産登記法が改正され相続登記が義務化に至ることとなりました。

※1:所有者不明土地とは、「相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、又は所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地」のことです。

(2)相続後3年以内の相続登記が義務化

今回の法改正では「不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内」に登記することが義務付けられます。「相続で取得したことを知った日(相続開始日)」とは「被相続人が亡くなったこと」かつ「相続すべき不動産が存在すること」を知った日となります。つまり、これらを知らなかった場合は申請の義務は発生しません。ただし、そのことを知った時点からは義務が発生します。また、遺産分割協議(※2)が行われている場合は、協議が成立した日から3年以内が期限となります。
なお、今回の法改正では、「正当な理由なく」期限内に登記を申請しなかった場合に10万円以下の過料という罰則が生じる可能性があります。過料とは、国または公共団体が行政上の義務違反に対して金銭的負担を課すもので、分類としては交通違反における反則金と同じ行政罰となります。刑事事件における罰金とは異なり前科にはなりません。とはいえ、過料が発生するという心理的な負荷によって、これまでよりは相続登記が進むと考えられています。

※2:遺産分割協議とは、誰がどの遺産をどれくらいの割合で相続するかについて、法定相続人全員で行う協議のことです。

(3)法改正以前の相続にも適用される点に注意

今回の法改正は、令和6年(2024年)4月1日より施行されます。注意すべきなのは「法改正が施行される以前の相続にも適用される」点です。つまり、法律が施行される令和6年4月1日以前に相続した不動産に対しても、さかのぼっての登記申請が必要となります。 ただし、施行前に相続した不動産については、相続登記申請に3年の猶予期間が設けられています。具体的には、令和9年3月31日までに登記すれば問題ありません。ただし、正当な理由なく猶予期間を過ぎた場合には、過料の対象となる可能性が発生します。

(4)不動産登記にかかる手間と費用

相続登記の申請は個人でも可能です。その場合にかかる費用は各種手数料など数千円程度で済みます。ただし、不動産登記に必要な書類は20種類以上にのぼり、内容も専門的かつ複雑なので、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。なお、司法書士に依頼した場合の報酬は、5〜10万円程度が相場と言われています。


市区町村によっては、空き家空き地対策の一環で補助金を出すところもありますので、ご自身の自治体でも補助金制度があるかお調べしてみてください。

なお、不動産を登記する際は、前述した手数料や報酬の他に、登録免許税を支払う必要があります。登録免許税は不動産価格(固定資産税評価額)の0.4%です。たとえば不動産価格が1,000万円の場合、登録免許税は4万円となります(※3)。

※3:売買・交換・競売・贈与などの場合は登録免許税が2%となります。また、相続する不動産が土地の場合で、土地の不動産価格が100万円以下の場合は(令和7年3月31日まで)免税されます。

(5)具体的にどう変わるかは今後の運用次第

不動産を相続する場合、控除によって相続税はかからなかったとしても固定資産税は発生します。さらに、長く登記簿名義が変更されなかったため、遺族側でも相続人がだれなのかわからず遺産分割協議が進まないケースも考えられます。
今回の法改正により、所有者不明土地の減少が期待される一方で、土地相続に関する様々な問題が噴出する可能性もあります。


そのひとつとして、相続登記をすることで、不動産会社に相続不動産として名簿が出回り、不動産会社からご自宅宛てに売却依頼のDMが来ることが予想されます。

具体的にどんな問題が起こるのかは予想もつかない点も多く、実際に法律が施行されある程度時間が経たないと見えてこないかもしれません。
兎にも角にも、3年の猶予期間があるので、不動産を相続した方、もしくはその可能性のある方は、早い段階から情報を収集して対策を検討することをお勧めします。私たちミカタでは、相続に関する法改正など、様々な情報を今後も発信し続けていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

【参考】
政府広報オンライン「なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202203/2.html

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