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2025/01/20

知っているようで知らない資産の種類についてお教えします!!

知っているようで知らない 資産の種類についてお教えします!!

国税局 OBが語る!!
相続税で注意する「資産」のポイント

相続が発生すると、相続人が受け取る資産に対して相続税の支払い義務が生じます。この点については、おそらくほとんどの方がご存知であろうと思います。一方で、「どんな資産に相続税がかかるのか」や「そもそも資産とは何か」について、理解している方は少ないようです。そこで今回、国税局OBで相続税の税務調査を実施した経験を持つ弊社の福山充男が、「資産と相続税」について注意するポイントを解説します。

(1)資産と財産の違い

「資産」と混同しがちな用語に「財産」があります。まずは、この違いについて説明します。
財産とは、個人や企業が所有する経済的な価値を持つものを指します。なお、財産には「現金、不動産、設備、建物」など実体がある有形財産と、「特許、商標、著作権」など実体がない無形財産があります。
財産の中で、「経済的な価値がプラスとなる財産」を資産と呼びます。一方、「経済的な価値がマイナスとなる財産」は負債と呼びます。つまり、資産と負債をあわせたものが財産となります。
相続するのは財産となります。資産のみ、負債のみを選んで相続することはできません。なお、相続税は財産すべてにかけられます。ただし、負債分は控除されます(一部、控除対象にならない負債もあります)。

(2)資産であるかを判断する基準

前述したように、「経済的な価値がプラスとなる財産」が資産です。これを、より具体的にわかりやすく言い換えると「お金に換えられるもの」が資産となります。
土地、建物、自動車などの有形財産は、購入金額ではなく相続開始日の評価額で相続税が算出されます。なお、書画や骨董、貴金属類、ブランド品などの評価額は、売買の実例価額や専門家の査定価額などを参考にしますが、購入金額と評価額に大きな差が生まれるケースが多々あります(購入時より評価額が上がるケースは滅多にありません)。
無形財産でも考え方は同じで、評価額が付くものが資産となります。代表的な例としては、電話加入権があります。ただ、2020年12月までの電話加入権の評価額は「全国一律で1,500円」であり、更に2021年1月からは一般動産と一括して評価して良いこととされましたので、相続税の額に影響を与える可能性はほぼゼロです。一方で、資格や譲渡が認められない会員権などはお金 に換えられない相続人にとって「経済的な価値がプラス」とはならないので、資産とはなりません。
なお、特許や著作権などの知的財産権については、それぞれに評価額の算出方法が定められています。たとえば著作権の場合は以下の式で計算されます。

【著作権の評価額の算出方法】
 著作権の価額=年平均印税収入の額×0.5×評価倍率

(3)相続する財産を見落としていた場合のリスク

評価額の算出には専門家の力が必要な場合もあるので、非常に厄介で手間がかかります。しかし、それ以上に厄介なのが、相続の手続き後に新たな資産や負債が見つかった(または税務署から指摘された)場合です。
もし申告すべき資産が漏れていた場合、追徴課税(延滞税、過少申告加算税など)が発生します。なお、追徴課税には、自ら申告した場合と税務署から指摘が入った場合とで、課税の税率は大きく異なります。

■自ら修正申告をした場合
 税務署から指摘が入る前に、自ら修正申告を行なった場合、追徴課税として延滞税が課せられます。

【延滞税】

  • 納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年2.4%
  • 2か月を経過した日以後:年8.7%

※令和4年1月1日から令和6年12月31日までの期間の課税
※延滞税は納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて課税
【国税庁:延滞税の計算方法】
  https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm


税務署から指摘が入った後に修正申告をした場合
 税務署からの指摘を受けて修正申告を行なった場合、延滞税に加えて過少申告加算税が加算されます。

このように、修正申告でも税務署から指摘が入る前と後では、追徴課税の比率に大きな差が出ます。そのため、資産の洗い出しは、できるだけ正確に行い、もし見落としていた資産があった場合は、すみやかに修正申告を行う必要があります。
なお、資産を調べていくうちに、見落としていた負債が見つかる場合もあります。相続が発生した日から3か月以上経過すると、原則として相続の放棄が認められなくなるので、見落としていた負債が莫大なものだった場合は大変なことになります。ただし、3か月過ぎていても相続の放棄が認められる場合もあるので、万が一の場合は弁護士に相談してみるとよいでしょう。

(4)相続時に見落とされがちな資産

資産には、多種多様な種類があります。土地や自動車のように市場の相場からおおよその評価がわかるものもあれば、美術品や骨董品のように専門家に頼まなければ評価額がわからないものもあります。中には、そもそも評価できる専門家が誰なのかがわからないような資産もあります。
たとえば、国の財産評価基本通達には「庭園」という項目があります。一般的な家屋にある庭であれば、資産として評価されることは稀でしょう。しかし、木の一本一本まで整備され、池や石細工の灯篭などあれば、「庭園」として資産評価される可能性はゼロではありません。
過去の経験上、特に見落とされがちだった資産(財産)として保険があります。例えば、夫婦で年金保険に加入している場合、自分の名義だけではなくパートナーの名義分も保険料を支払うケースがあります。民法上は、名義上の人物が契約者となりますが、税法上 は契約者名にかかわらず保険料負担者が誰かによって課税関係を考えることとなります。もし、夫が妻の名義分の保険料も支払っていた場合、夫が亡くなった後に支給される年金保険の 受給権は、たとえ名義が妻であったとしても夫の資産となり、相続税が発生します。

以前であれば、存在に気がついた資産でも、最近は気が付きにくくなっています。
通常、土地を所有していれば、毎年のように課税通知の封書が届きます。有価証券なども証券会社から案内が届きます。そのため、郵便物をチェックしていれば、少なくとも同居している家族であれば、どこにどんな財産があるのかについて、おおよその把握をすることができました。しかし最近は、銀行や証券会社からの通知は郵便物ではなく、インターネット上のメールやメッセージで届くケースが増えてきています。
その人の資産を把握するには、使用しているパソコンやスマートフォンの内容を確認しなければ不可能な時代になっています。国策としてデジタル化を推進している以上、今後は税務署や自治体からの連絡も、ネット上で行われる可能性が高くなることが予想されます。

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 ✓ デジタル化に備えるうえでのポイント
万が一に備えて、パソコンやスマートフォンにアクセスするためのIDやパスワードを伝えておくなどの手段もありますが、セキュリティの観点からは、あまりお勧めはできないのが正直なところです。
この点については、結局のところ財産目録を用意などのアナログな手法に頼るのがもっとも有効な手段だと思われます。財産目録に金額を書く必要はありません。どこと、どんな取引をしているのかだけで十分です。取引している銀行や証券会社がわかれば、問い合わせれば資産額を教えてくれます。
すべての資産を把握するのは難しいかもしれません。
もし、わからないことがあれば銀行や自治体の相談窓口、もしくは最寄りの税理士に相談してみてください。
相続は、複雑で難しい点がある一方、もっとも優遇された税制でもあります。しっかと調べて対策をすれば、それに見合ったメリットが受けられます。


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