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【適用期限は2027年12月末】事業承継税制の特例措置に期限迫る ~2026年のうちに着手すべき会社の特徴と対策~
【適用期限は2027年12月末】事業承継税制の特例措置に期限迫る
~2026年のうちに着手すべき会社の特徴と対策~
自社の株式を後継者に引き継ぐ際の贈与税・相続税を実質ゼロにできる「事業承継税制(特例措置)」。令和8年度税制改正大綱により、制度を使うための入り口となる「特例承継計画」の提出期限は延長されることになりました。しかし、実際に贈与・相続を実行できる期限(適用期限)は2027年12月31日のまま据え置かれています。
「期限が延びたなら急がなくていい」と考えるのは危険です。計画提出の期限ぎりぎりまで待つと、実行期限までの猶予はわずか3か月程度しか残りません。株価の算定、後継者との合意形成、認定支援機関との面談など、準備には数か月から1年程度かかるのが一般的です。本記事では、事業承継税制(特例措置)の制度概要と2027年終了に向けたスケジュールを整理したうえで、2026年のうちに着手すべき会社の特徴と、対応すべき課題を緊急度別に解説します。
1. 事業承継税制(特例措置)とは何か
事業承継税制とは、後継者が先代経営者から非上場株式等を取得した際にかかる贈与税・相続税の納税が、要件を満たし続ける限り猶予される制度です。株式を保有し続けている間は納税が猶予され、実質的な負担はゼロになります。猶予されている税額が最終的に免除されるのは、後継者が亡くなった場合や、さらに次の世代へ株式を贈与・承継した場合など、限られたタイミングです。
経営者の高齢化が進むなか、円滑な世代交代を後押しする目的で2009年に「一般措置」が創設されましたが、要件が厳しく使い勝手が悪いとの声を受け、2018年(平成30年)に10年間の時限措置として「特例措置」が新設されました。特例措置では、納税猶予割合が100%に拡大され、対象株式数の上限もなくなり、後継者は最大3人まで指定可能になるなど、一般措置の弱点が大きく緩和されています(恒久的な制度ではない点など、時限措置としての性質は残ります)。雇用確保要件(承継後5年間平均8割の雇用維持)も実質的に撤廃され、要件を満たせなくても正当な理由があれば猶予が継続できるようになりました。
制度を利用するには、まず認定支援機関(税理士・公認会計士・商工会議所など)の指導を受けて「特例承継計画」を作成し、都道府県庁に提出して確認を受ける必要があります。
2. 何が変わるのか-計画提出期限は延長、実行期限は据え置き
令和8年度税制改正大綱では、特例承継計画等の提出期限について以下のとおり延長が示されました。
| 区分 | 変更前 | 変更後 | 延長幅 |
|---|---|---|---|
| 法人版(特例承継計画) | 2026年3月31日 | 2027年9月30日 | 1年6か月 |
| 個人版(個人事業承継計画) | 2026年3月31日 | 2028年9月30日 | 2年6か月 |
一方で、実際に贈与・相続を実行しなければならない「適用期限」は延長されていません。 法人版は2027年(令和9年)12月31日、個人版は2028年(令和10年)12月31日が最終ラインです。計画提出の期限をぎりぎりまで使うと、実行期限までに残された時間は法人版でわずか約3か月しかない計算になります。令和7年度税制改正大綱では、この適用期限をこれ以上延長しない方針が明言されています。適用期限到来後の一般措置の扱いなどについては令和9年度税制改正で結論を得るとされていますが、少なくとも実行期限自体の再延長は見込みにくい状況です。
3. 2026年のうちに着手すべき会社の特徴
以下のような特徴を持つ会社は、2026年中に検討を始めることを強くおすすめします。
- 先代経営者が一定の年齢以上で、後継者候補がすでに役員等として経営に関与している会社
後継者の意思と経営体制がある程度固まっている場合、株価評価や贈与の実行時期を具体的に設計できる段階にあります。 - 自社株の評価額が今後上昇する見込みの会社
業績拡大や含み益のある不動産保有などにより株価が右肩上がりの場合、評価額が低いうちに贈与を実行したほうが猶予・免除される税額のメリットが大きくなります。 - 株主構成が複雑で、親族間の調整に時間がかかりそうな会社
遺留分に関する民法特例など、株式分散を防ぐための手続きには相応の準備期間が必要です。 - 特例承継計画をまだ提出しておらず、将来的な事業承継を漠然と検討している会社
後継者が完全に確定していなくても、計画を提出しておくことで特例措置を使う権利を確保できます。将来の選択肢を残す意味でも早めの提出が有効です。 - M&Aによる第三者承継か、親族内承継かで方針が定まっていない会社
方針決定自体に時間がかかるため、2026年中に社内での検討を始めなければ、2027年の実行期限に間に合わない可能性があります。
4. 特例措置が終了するとどうなるか-3つの影響
- 1. 猶予できる税額が実質100%から53%に大幅に低下する
実行期限を過ぎて一般措置しか使えなくなると、猶予割合は80%、対象株数も総株式数の3分の2までに制限されます。掛け合わせると、実質的に猶予できる税額は「80%×2/3=約53%」相当まで縮小し、残りの約47%相当分については、相続税・贈与税を現金で用意する必要が生じます。 - 2. 雇用確保要件が厳格に復活する
特例措置では実質撤廃されていた「承継後5年間平均8割の雇用維持」要件が、一般措置では原則どおり求められます。維持できない場合は猶予が打ち切られ、猶予税額と利子税をまとめて納付するリスクがあります。 - 3. 後継者を1人しか指定できなくなる
特例措置では最大3人まで後継者を指定できますが、一般措置では原則1人に限定されます。複数の子や役員に株式を分散して承継させたい会社は、選択肢が大きく狭まります。
5. 今すぐ対処すべき課題
6. 特例措置と一般措置の比較
| 項目 | 特例措置(~2027年12月末) | 一般措置(恒久) |
|---|---|---|
| 納税猶予割合 (相続税) |
100% | 80% (対象株数2/3と合わせた実質猶予割合は約53%) |
| 対象株数 | 上限なし (全株式) | 総株式数の3分の2まで |
| 後継者の人数 | 最大3人 | 原則1人 |
| 雇用確保要件 | 実質撤廃 | 平均8割維持が原則 |
| 事前の計画提出 | 必要 (認定支援機関の指導を受けて作成) |
不要 (任意の事前確認申請の制度あり) |
特例措置は要件面で大幅に有利ですが、事前の計画提出という手続きが必須です。一般措置に切り替わると手続きの手間は減る一方、税負担のメリットは大きく縮小します。
7. 「また延長される」への期待は禁物
特例承継計画の提出期限はこれまでも複数回延長されてきました。今回も延長されたことで「まだ余裕がある」と感じる経営者もいるかもしれませんが、令和8年度税制改正大綱では、実行期限そのものは据え置かれています。
制度の位置づけは「待ったなしの課題を解決するための時限措置」であり、適用期限到来後の扱いは令和9年度税制改正で結論を得るとされています。恒久化される保証はなく、次の延長があるとも限りません。「今回がラストチャンス」という前提で動くことが、結果的に選択肢を残すことにつながります。
なお、非上場株式の評価方法の見直し(取引相場のない株式の評価に関する有識者会議での議論)により、株価評価が引き上げられる方向性(課税強化)も並行して検討されています。この負担増への対応として、事業承継税制のさらなる拡充を求める声も、商工会議所・商工会を中心に強まっています。「今回がラストチャンス」という前提は変わりませんが、評価方法の見直しとセットで、事業承継税制自体が今後拡充される可能性がある点もあわせて注視しておく必要があります。
「計画は延びた、実行の期限は延びていない」を前提に動く
事業承継税制(特例措置)は、計画提出の期限こそ延長されましたが、実際に贈与・相続を実行できる期限は2027年12月31日のまま変わりません。準備には株価算定・後継者との合意・親族間調整など、想像以上に時間がかかります。
まずは自社が「2026年のうちに着手すべき会社」に当てはまるかどうかを確認し、該当する場合は顧問税理士に早めに相談することをおすすめします。特例措置と一般措置の税負担の差は、会社の規模によっては数千万円単位に及ぶこともあります。
事業承継税制の適用可否や特例承継計画の作成については、早めに税理士にご相談ください。
参考資料 ・中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」 ・国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例」 ・令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日公表)

