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国税OBが「税務調査の現場」を語る! 税務調査よもやま話
国税OBが語る現場で見聞きしたリアルエピソードとワンポイントアドバイスをご紹介いたします!
天のお告げ ~真実は天からやってくる~
けっして、宗教話ではありません。私が20代の若手調査官のころ。
関東圏の造園屋さんに現況調査でおじゃました時のお話しです。
現況調査とは、事前通知なしに無予告で税務調査を行う方法です。
先輩2人と私の3人で調査先に向かいました。
先輩方は玄関からおじゃまし、私は会社社屋の裏手出入口で待機を指示されました。
私の役目は、裏手出入口から会社の人が税務署に見せたくない書類などを
持ち出さないか監視するいわゆる見張り役です。
秋空のイワシ雲がたなびく晴天下、高い空を見上げていると社屋2階の小窓が開き、
ルーズリーフなどの帳簿数冊が私の足元にバサリと落ちてきました。
もうお分かりと思いますが、落ちてきたものは、除外した売上が正しく記帳されている真実の帳簿、
いわゆる「裏帳簿」です。調査は開始15分で終了。不正計算の全容把握です。
事情をお聞きすると、帳簿を窓から捨てたのは経理を担当する社長の奥様。
突然の税務署職員の来訪に驚き、とっさに裏帳簿を抱えトイレに駆け込み、
帳簿をその窓から捨てたとのこと。
天のお告げ ~真実は天からやってくる~。
お天道様はみんな見ています。悪いことはできません。
なりすまし ~社長は何処へ~
税務署:「おはようございます。〇〇税務署の○○です。本日は、法人税等の税務調査に
おじゃまいたしました。社長様とお会いしたいのですが、社長さんはいらっしゃいますか?」
会 社:『あー社長ねー。ちょっと前に出かけましたね。』
税務署:「社長さんと連絡が取れますか?」
会 社:『どこに行くか言わないで出かけたので連絡取れないね。』
社会にまだ携帯電話が普及していなかったころ。
関東圏の運送屋さんに現況調査でおじゃました時のお話しです。
現況調査とは、事前通知なしに無予告で税務調査を行う方法です。
私は、カウンターにいた配車係と思わしき初老の男性社員とこんなやり取りをし、
玄関ホールにある応接セットで社長さんの帰りをしばらく待たせていただくこととしました。
30分位が経過した頃でしょうか。社員さんの皆さんが淡々と事務を進める中、
静かな事務室に一本の電話が鳴り響きます。
『ルルルゥ、ルルルゥ…。はい、○○急送です。いつもありがとうございます。
ちょっとお待ちくださーい。』
『社長ー!○○さんからお電話です⁉』
もうお分かりと思いますが、私が勝手に配車係と思い込んでいた初老の男性社員は
会社の社長さんだったのです。その後、所定の手続を終え無事に
税務調査を開始することができました。
社長さんに事情をお聞きすると、やましいことは一切していないが突然の
税務署職員の来訪に驚き、とっさに嘘をついてしまった。
カウンターから離れることもできずに30分もの時間が長く何時間にも感じたとのこと。
バブル景気 ~消えた1億円~
税務調査は、会社が行った過去の取引(金、物、人)を残された書類に基づき過去を
再現してそこに税務上の誤りがあれば是正していくものです。
バブル時代には都市部を中心に再開発が進み、土地取引が活発化しました。
いわゆる“地上げ”のお話しです。舞台は、地方の新幹線が停まる県庁所在地です。
A社が5千万で売った土地を、Bを経て一週間後にC社が1億5千万円で買いました。
つまり、A社とC社との間の差額1億円は利益として誰かの手元に残ったわけです。
しかし、その利益がBらの誰からも申告はありません。
話を簡単にするため中間者をBとしていますが、
実際にはBはB¹、B²、B³…と複数名の人が中間に入っていました。
結果を先にお伝えすると、A社とC社との間の差額1億円が誰の手元に残ったのかは
解明できませんでした。この取引を地道に反面調査していくと、B¹、B²、B³…には
住民票はあるが行方不明の人や脳疾患で意識がないおじいちゃんも存在していました。
任意調査の限界です。
まるで「マルサの女」(30年ほど前に国税局査察部を題材にした映画)に出てくる取引です。
・・・後日談として、この調査の1年後に国税局査察部が動き、刑事事件として処理されました。
まとめ:税務調査におけるワンポイントアドバイス
✓当たり前のことですが、不正経理(売上除外、架空経費計上など)は行わない。
⇒お天道様は視(み)てます。どこかで発覚します。
発覚の心配を抱え暮らすのは、並大抵の精神では難しいはずです。
✓現況調査(無予告調査)では先ずは顧問税理士に連絡する。
⇒原則、税理士が立会いの下調査に応ずる。税理士が到着するまで調査開始しない。
⇒昨今、税務職員を名乗り情報や金銭を搾取する詐欺事件が発生しているのでご注意を!
✓税務職員からの質問には真実を正々堂々と話す。
⇒正しいことを正しく回答することが、調査を短期間で終了させる近道です。