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2026/04/27

その給与設計、会社が潰れます!人件費の正解は「労働分配率」で決まる

その給与設計、会社が潰れます!人件費の正解は「労働分配率」で決まる

その給与設計、会社が潰れます!
人件費の正解は「労働分配率」で決まる

昨今の物価高騰や深刻な人手不足を背景に、世の中では賃上げが叫ばれています。
「自社も周囲に合わせて賃上げしなければ」と悩んでいませんか?
しかし、根拠のない賃上げは企業体力を奪い、最悪の場合は倒産リスクを高めます。
この記事では、「労働分配率」という指標をもとに、自社の適正な人件費水準を見極め、利益を確保しながら無理なく給与を引き上げていくための「潰れない会社」を実現する給与設計について解説します。

新聞やニュースを開けば、大手企業の景気の良い賃上げ回答が並びます。
「世間は3%、5%と賃上げしているが、うちはどこまで耐えられるのか……」
「採用のために初任給を上げたいが、既存社員とのバランスが取れない……」

こうした悩みは、多くの経営者に共有する事項です。
ここで経営者が肝に銘じておくべき事実は、「給与は一度上げると簡単には下げられない固定費である」ということです。労働分配率を無視した賃上げは、わずかな売上減少で一気に赤字転落を招き、資金繰りをショートさせます。これは、企業の倒産の典型的なパターンです。

この記事を読むメリット:
この記事では、経営者が知っておくべき「労働分配率」という指標を用いて、

  1. 自社の人件費は「払いすぎ」なのか「余力がある」のか
  2. 業界他社の標準と比較して、自社はどうなのか
  3. 利益を減らさずに、社員の給料を上げるためにどうするか

について、明らかにします。

1.労働分配率とは?

労働分配率とは、一言でいうと「会社が生み出した利益(付加価値)のうち、どれくらいを社員の給料として分配したか」を示す指標です。

一般的には以下の計算式となります。

労働分配率=人件費※1÷粗利益(売上―原価)※2

※1.人件費とは、給料、賞与、ならびに社会保険料の会社負担分や福利厚生費なども含まれます。
※2.厳密には付加価値額で計算する方法もありますが、中小企業では粗利益ベースで計算する方法が実務的です。

この数値は、「利益をどれだけ会社に残し、どれだけ社員に還元しているか」というバランスを示すものです。

2.業界別の労働分配率

労働分配率には「一律の正解」はありません。なぜなら、業種によって必要な設備投資額や、ビジネスモデルにおける「人の役割」が大きく異なるからです。以下の表は、一般的な業界別の目安です。

※本表の数値は、公的統計(中小企業庁・財務省等)を参考にしつつ、実務上の経営判断において活用しやすいよう、一定の実務的な補正を加えて作成したものです。
労働分配率は、定義や算出方法(付加価値の捉え方等)によって数値が変動する指標であり、統計値をそのまま当てはめても実態と乖離する場合があります。
そのため、本表は統計の単純な転用ではなく、実務上の意思決定に資する「目安」としてご参照ください。

業種 労働分配率の目安 特徴
医療業・福祉業 60%~65% 労働集約型であり、分配率が高止まりしやすい。売上の上限(診療報酬等)が決まっているため、稼働率の管理と無駄な経費削減が重要です。
宿泊業・飲食業 55%~65% 人手不足による賃上圧力が強い業界。単価アップ(高付加価値化)とオペレーションの効率化が必要。
建設業 50%~60% 「人」が直接付加価値を生むモデル。元請・下請の構造や外注比率により人件費水準は変動しやすく、工期管理やミス防止による生産性向上が鍵。
情報通信業(IT) 50%~60% 仕入がほぼ無いが、外注費等で粗利は削られます。高給で人材を確保しつつ、「作った仕組みが稼ぐ」モデルへ転換が鍵。
製造業 45%~55% 機械や設備に稼がせるモデル。設備投資や研究開発費を確保するため、分配率は低く抑える必要があります。
卸売業・小売業 45%~55% 商品の仕入原価が高く、粗利が薄い業種です。徹底した在庫管理と回転率が重要です。
不動産業 30%~40% 少人数精鋭で大きな物件を動かすため、分配率は低く抑えられる傾向にあります。
  • 目安より「高い」場合:黄色信号です。生産性が低いか、あるいは業績に見合わない過剰な給与を支払っている可能性があります。この状態で賃上げを強行すると、財務状況をさらに悪化させる可能性があります。
  • 目安より「低い」場合:収益性が高く、昇給の余力があると言えます。ただし、極端に低い場合は「還元が不十分」と捉えられ、人材流出を招くリスクがあります。

3.昇給の考え方

経営者が目指すべきは、「労働分配率を下げながら、給料を上げること」です。
「給料を上げる=利益が減る」と考えがちですが、これは「粗利益が一定」という前提に立っているからです。正しいステップは以下の通りです。

ステップ1:現状把握と目標設定

まずは直近3期分の決算書から、自社の平均的な労働分配率を算出してください。

例:現在の分配率が40%であれば、「3年かけて37%まで下げつつ、年収は5%アップさせる」といった、「労働分配率の引き下げ」と「年収アップ」の同時並行を目標にします。

ステップ2:目標分配率から「昇給原資」を逆算する

感覚で「月5,000円アップ」や「世間並み」で決めるのではなく、目標とする労働分配率から、会社が支払える人件費の総枠(予算)を算出します。

【ケーススタディ:卸売業(社員10名)の場合】
  • 目標の労働分配率:48%
  • 予測粗利益:1億円
  • 昨年度の実績人件費:4,600万円(法定福利費等含む)
  1. 今期支払って良い人件費の総額を出す
    1億円(粗利)×48%(目標分配率)=4,800万円
  2. 昨年度実績との差分(昇給原資)を出す
    4,800万円-4,600万円(前期実績)=200万円

4.持続可能な経営のための「賃金制度」構築

算出した「昇給原資」を、ただ一律に配分すれば良いわけではありません。ここで重要になるのが、「賃金制度の構築」と「評価の透明性」です。

  1. 算出した原資をどう配分するか?
    先ほどのケーススタディで導き出した「200万円」の原資。これを単に10人で割って「全員一律20万円アップ」はできません。
    なぜなら、労働分配率を維持・改善していくためには、「会社に貢献した人」により手厚く報いる仕組みが不可欠だからです。

    • 貢献度に応じた配分:粗利益を高めた人、DXを推進した人、AIを使いこなして業務時間を削った人。こうした「生産性を上げた社員」に原資を傾斜配分することで、会社全体の生産性はさらに加速します。
    • 固定給と変動給のバランス:原資200万円のすべてを基本給(固定費)に上乗せするのはリスクがあります。一部を「賞与」や「インセンティブ」などの変動費として設定することで、万が一粗利益が目標に届かなかった際の倒産リスクを回避できます。
  2. 「なぜ自分の給与はこの額なのか」に答えられるか
    賃上げを行う際、社員が最も注目するのは「金額」そのものよりも、「納得感」です。

    • 「何を頑張れば給料が上がるのか」
    • 「自分の今の給料は、どのような基準で決まっているのか」これらがブラックボックスのまま賃上げを行うと、たとえ昇給しても「社長の気分次第」「声の大きい人が得をする」といった不信感を生み、かえってモチベーションを下げてしまいます。
  3. 「会社と社員の利益」を一致させる仕組みづくり
    賃金制度を構築することは、単なる給与計算のルール作りではありません。
    労働分配率をベースにした賃金制度が運用されると、社員は自ずとこう考えるようになります。「無駄な経費を減らして粗利が増えれば、自分たちの取り分(原資)も増える」
    この「会社が儲かることと、自分の給料が増えることが地続きである」という当事者意識こそが、モチベーションとなります。持続可能な賃上げとは、経営者が一方的に与えるものではなく、明確な制度のもとで、社員と共に勝ち取っていくものなのです。
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「世間が上げているから」「人が辞めそうだから」……そういった理由で、根拠なき賃上げに踏み切ることは、会社を倒産に導く、危険な行為かもしれません。
この記事で解説してきた通り、会社を永続させ、社員を守り抜くためには以下のプロセスが必須です。

  1. 労働分配率を知る自社の「体力」を数字で正しく把握する。
  2. 目標を逆算する粗利益と分配率から「安全な昇給原資」を算出する。
  3. 生産性を高めるIT、DX、AI、そして教育。これらを通じて「1人あたりの粗利益」を底上げする。
  4. 制度を整える頑張りが正当に報われる賃金制度を構築し、社員の納得感を高める。

「適正な昇給額はいくらなのか、自社の実情を知りたい」「具体的な賃金制度の構築について相談したい」とお悩みの方は、ぜひミカタ社会保険労務士法人へご相談ください。

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