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会社を設立する前に、個人事業がいいのか、法人がいいかを考える5つのポイント (事前準備編)
会社を設立する(起業をする)にあたって、個人事業がいいのか、法人がいいのかを考えるべき5つのポイントになります。
以下のポイントを押さえながら、どっちの方法で起業をするのがいいのか、考えてみましょう。
個人事業主で起業するのが向いている方の特徴
Point 1.業種等の特徴
- 取引先や営業対象が個人相手
業種例
ネットショップ / 飲食店 / WEB製作 / デザイナー / サロン(理美容)等
Point 2.開業にかかる費用
- 取引先や営業対象が個人相手
0円(設立届と青色申告の承認申請書を税務署へ提出するだけ)
Point 3.経営リスク
- 赤字の場合、税金(所得)がかかりません
※ただし、赤字は3年間しか繰り越せません - 万が一事業に失敗した場合、廃業届を税務署へ提出するだけで廃業が出来る法人に比べ、失敗した時のリスクが低いため、事業の見通しが立たない場合は個人事業から始めることを検討するのがおすすめです。
①税金面
- ある一定ラインまでは、法人税と所得税を比べた場合に所得税率が低い
課税所得金額が330~695万円の場合、所得税率は20%です。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4796,000円 |
引用元:国税庁 「所得税の税率」
※課税所得とは?
課税所得=所得金額(収入-経費)-所得控除(社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、配偶者控除、基礎控除等)
住民税が10%なので、合計すると税率は30%になります。
法人の実効税率は大体30%程(法人事業税・住民税・地方法人税の合計)なのでこの辺りの課税所得になってくると、税率だけで比べると法人と同じぐらいの税率になります。
ただ、個人の課税所得は節税対策(小規模企業共済、家賃の前払い、専従者給与等、青色申告65万控除)をした上で330~695万円の課税所得になるのかにもよりますので、この辺りの課税所得の方は個人で、まだ課税所得を抑えられる余地があるのか、ないのかを税理士事務所等にご相談するのがおすすめです。
Point 4.配偶者の取り扱い
- 配偶者に給与を出すためには、青色専従者給与の届出を事前に税務署に提供しないといけません。
専従者給与が経費として認められるためには、下記の要件を満たしているか どうかの注意が必要です。
要件
a) 生計が同じ親族に対する給与であること
b) 1年のうち6ヶ月以上その事業に従事していること
c) 従事期間中はそれ以外の仕事をしていないこと
d) 青色専従者給与に関する届出書を提出していること
- デメリットとしては、扶養控除(38万円控除)や配偶者控除(最大38万円控除)を受けられないなどがあります。なので、専従者給与を出す場合は、最低でも38万円以上支給しないと損をする可能性があり、注意が必要です。
- 配偶者がいない場合、もしくは事業に関わらない場合は気にする必要はありません。
法人(株式会社or合同会社)を設立して起業するのが向いている方の特徴
Point 1.取引先が法人(信用力を求められ、法人じゃないと取引できない場合もある)
- 取引先や営業対象が個人相手
業種例
建設業 / 法人営業 / コンサルティング業 / SE / 運送業等
※一部の業種や外国人に限っては許可取得のために法人設立が必須
介護福祉事業 / 有料職業紹介 / 経営管理ビザの取得等
Point 2.開業に係る費用
- 合同会社の場合 60,000円(登録免許税)
- 株式会社の場合180,000~200,000円(登録免許税+定款認証代)
※資本金の金額により変動
その他にかかる費用
- 印鑑代 6,000~20,000円程 ※材質により変動
- 各種証明書(謄本・印鑑証明等)450~600円/枚
Point 3.経営リスク
- 赤字の場合でも均等割という税金が70,000円かかります
※個人と違い、法人では赤字を10年繰り越すことができます - 廃業しようとした場合、費用がかかります(数十万円)
※廃業だけでなく休業という選択肢もあります
Point 4.税金面
- 法人税率は利益によって累進課税では無いため、利益が多く出る方には 法人の方がおすすめです。大体の法人の実効税率30%
- 法人にすると個人の所得は給与収入となるため、基礎控除だけでなく給与所得控除を使える点などもメリットとしてあります。
- 個人事業に比べ、法人の方が節税の種類が豊富です。
≪例≫
役員社宅 / 旅費規程 / 法人保険 / 社用車 等
資料:国税庁「法人税の税率」
※税金面では、お得に見えるかもしれませんが、社会保険料も考慮する必要があります。
法人の場合、社会保険料の負担は個人分と法人分の負担になります。
法人も個人も社長のお金の出費と考えれば、社会保険料は、大きな負担になりますので、所得税、法人税、社会保険のバランスを考えて、役員報酬を設定しないと得しているのか、損しているのかが分からないことになります。
使える節税対策をしつつ、給与と社会保険のバランスを考えるためには税理士等の専門家に相談して、役員報酬シミュレーションなどをすることがおすすめです。
Point 5.配偶者の取り扱い
- 法人の場合は、配偶者を役員にするケースが多いです。
メリットとしては、以下のようなものがあります。
a) 夫婦で所得分散ができる
b) 扶養に入れることができる
c) 退職金を支給できる
d) 労働の対価ではないため、労働時間に制限がない
※配偶者の仕事の実態があるかどうかには注意が必要です。
具体的には、実際に仕事に携わっているかどうか、業務内容や業務量と役員報酬のバランスは適正かどうか等です。
配偶者の役員報酬を決める上でも、所得分散した場合の所得税や社会保険料、扶養にした場合の扶養控除や社会保険料と生活費のバランスを考える必要がありますので、税理士等の専門家に相談して、シミュレーションなどをすることがおすすめです。
ただし、配偶者がいない場合、もしくは事業に関わらない場合は気にする必要はありません。
以上の内容を踏まえた上で、個人事業で始めるべきかそれとも法人で始めるべきかを 検討してみてください。
できる限りイメージをしていただきたいことは、
- どういった事業をするのか?
- 事業の見通しは立てられているのか?
- 配偶者にはどういった関りをしてもらいたいのか?
- どれぐらいの生活費が必要なのか?
などがあります。
ご自身にあった形での起業ができる様にしっかりと考えていきましょう。