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【社長対談 第3弾・前編】「即戦力を採ったのに、なぜ噛み合わない」——AI時代に変わった、バックオフィス採用の常識
ミカタ社長対談 特別編!
〜採用のプロ × ミカタ社長、バックオフィス人材の"見方"が変わる話〜
経理・労務といったバックオフィスの人材が採れない、採っても定着しない。中小企業の経営者から最も多く寄せられる悩みのひとつです。今回は、士業・管理部門に特化した転職プラットフォームを運営する株式会社ヒュープロ代表・山本玲奈氏をお招きし、ミカタ税理士法人代表・柴田と語り合っていただきました。普段は顧問先の皆様にお話を伺っていますが、今回は特別編としてお届けします!2万件を超える転職支援の現場から見えてきた「採用の常識の変化」を、全国の中小企業経営者にお届けします。
ゲストのご紹介
経理担当者が辞めてから慌てて採用する。経歴の立派な即戦力を採ったのに、なぜか現場で噛み合わない。中小企業のバックオフィスで繰り返されてきたこの光景が、AIの登場によって、これまでとは違う形で問い直され始めています。「経験者を採れば解決する」という前提そのものが、崩れつつあるのです。学生時代に起業し、士業・管理部門という領域で2万件を超える転職を支援してきた株式会社ヒュープロ代表・山本玲奈氏との対話から、ミカタ税理士法人・柴田とともに、いま採用の現場で何が起きているのかを読み解きます。
「就職情報が、どこにもなかった」——弁護士志望の学生が、士業特化を選んだ理由
山本社長のキャリアは、経営者ではなく法律家を目指すところから始まりました。
山本社長
「学生時代にこの会社を創業しました。それまで18年ほど海外に住んでいて、大学生のときに日本へ戻ってきたんです。日本を起点に海外で活躍したいと考えて弁護士を目指し、士業の世界に入っていきました。ところが、就職の情報が全く手に入らない。みんなあれだけ一生懸命勉強しているのに、その先の情報がないんです。これをオープンにするメディアを立ち上げたいと考えて、弁護士になるのをやめて創業しました」
まず立ち上げたのは、士業領域に特化した就職サイトでした。そこから領域が広がっていった経緯は、極めて現場的です。
山本社長
「弁護士事務所を回っていると、『弁護士もいいけれど、税理士はいないの』と言われることが非常に多くて。そこから税理士の領域に広げていきました。すると今度は『税理士を紹介できるなら、経理はいませんか』という声がものすごく多い。一方で経理の方に聞くと、経理に特化した求人サイトがないから、どうやって良い就職先を見つければいいか分からないと言うんです。だったらマッチングすればいい、と」
当時、人材紹介業への評価は、決して高いものではありませんでした。
山本社長
「特にスタートアップ界隈では『レッドオーシャンだし、差別化できないし、成長拡大しないでしょう』と言われていました。でも私は、頭脳で勝負しようと思えば賢い人はいくらでもいるけれど、泥臭さでは負けないと思っていたんです。それに人材は、お役に立てるものが明確じゃないですか。就職できる、採用できる。絶対に『ありがとう』が生まれる」
数ある領域の中から士業を選んだ理由も、明快でした。
山本社長
「世の中にすごく価値を発揮しているのに、まだ誰も目をつけていない業界はどこか。それが士業でした。税理士は日本の99%の会社の顧問をしている。これだけみんなが求めている業界なのに、ちゃんとやっている人がいない。実際に話を聞きに行くと、皆さんが『困っている、困っている』とおっしゃる。本当に困っているかどうかを肌で感じてから選ぶ、というのが私のマーケットの選び方です」

数字が上がってこない会社は、勝負どころで動けない
2万件を超える転職支援の中で、中小企業から最もよく聞かれる困りごとは何か。山本社長の答えは、採用そのものの手前にありました。
山本社長
「やはり、数字がちゃんと上がってこないということですね。気づいたら税務調査が入って大変なことになっていた、というケースもありますし、出資を受けるといった重要な局面で、体制が整っていなさすぎて動けない。下手をすると、それで会社の価値が下がってしまうこともあります」(山本社長)
この問題意識の背景には、山本社長自身の原体験がありました。
山本社長
「実は私自身、バックオフィスがずさんすぎて会社が傾きかけたことがあるんです。そのときに顧問の税理士の先生に助けていただいて、この業界が日本の中小企業を救うんだと、その場で誓いました。それくらい、気づいたときにはもう手遅れという状態になっている会社が多いんです」
なぜ、そうなってしまうのか。ひとつはバックオフィスの優先順位の低さです。柴田は、その常識が変わりつつあると指摘します。
柴田
「コストセンターと言われてしまうくらいですからね。ただ最近は、銀行もバックオフィスがしっかりしている会社にはお金を貸しやすいと言うんですよ。ちゃんとしたスタッフがいて、要求した資料がすぐに出てきて、その内容もすぐ説明できる。その状態の会社は強い。守りを固めた方が、実は攻めるときにも攻めやすいんです」
「いなくなってから採る」が、定着しない採用を生む
優先順位の低さと並んで山本社長が挙げたのが、採用に動き出すタイミングでした。
山本社長
「いなくなってから採用しても、もう遅いんですね。今は本当に採用しにくいですし、良い人ほど人気があります。少し余裕を持った体制を早めに作っておかないと、いなくなってからでは時間がかかりすぎる。しかも、焦るじゃないですか。焦ると、よく分からない人を採用してしまう。エージェント側も正直、この領域を分かっていない会社が多くて、スキルの濃い人をどんどん送ってくる。それで『いいんじゃないかな』と採ってしまって、結局もっと時間がかかる」
ここで見過ごせないのが、間に入るエージェントの理解度です。バックオフィスという領域を分かっていないまま候補者を送られると、経歴だけが立派な人が並び、会社側はその良し悪しを判断できないまま選ぶことになる。士業・管理部門に特化したヒュープロが、この領域だけを見続けてきた理由もそこにあります。
さらに難しいのは、経営者自身が経理を分からないまま、最初の一人を採用しなければならないという構造です。
柴田
「ものづくりが得意だとか、売るのがうまいから会社をここまでにできた。でも経理が分からない。しっかりした人が一人いて、その下に採用するのであればその人が見ればいい。でも、最初の核になる人を採るときが一番難しいんです。分からない人が採用すると、うまいことを言うだけの人を採ってしまう。だからこそ、エージェントさんがしっかりしているか、あるいは我々のような顧問がアドバイスをさせていただく。『一緒に面接しましょうか』ということもあります。社長は何を聞けばいいか分からない。営業職なら判断できても、経理は分からないですから」
社長自身が判断できない領域だからこそ、外の目を借りる。そこに、領域を理解したエージェントや顧問税理士が果たせる役割があります。
組織の規模で見ると、分岐点は明確だと柴田は言います。
柴田
「30人くらいまでは、社長の右腕のような人が総務も経理も給与計算も何でもやっている会社が多いですよね。そこから50人、100人に行くときには、やはり管理部門に投資をしていかないと難しいと思います」
では、採用しても定着しない会社には何が共通しているのか。山本社長は、2つのパターンを挙げました。
山本社長
「1つ目は人間関係です。パワハラのようなケースもありますし、管理部門は属人化していることが多いので、『ここは全部私の島だから』という雰囲気の中に入っていくと、なかなかきつい。そもそも社長や会社が『管理部門や経理は別にいいや』と思っていると、入った人も大切に扱われていないと感じます。2つ目は、管理部門が整理されていなさすぎて大変だった、というパターンです。『こんなはずじゃなかった』というレベルで、何もないし引き継ぎもない。その状態で急に『決算を閉じろ』と言われても、責任を負えないですよね」
ここで、2つの問題が一本の線でつながります。前任者がいなくなってから採用するから、引き継ぐ相手がいない。社長も分かっていないから引き継げない。結果、入社した人が「こんなはずじゃなかった」と感じ、また辞めていく。後手の採用が、そのまま定着しない採用を生んでいるのです。

経歴上は申し分のない即戦力を採用したのに、現場で機能しない。この現象について、山本社長は2つの要因を挙げます。
山本社長
「1つは、情報を隠してしまうケースです。経理は会社のお金の流れを持っている重要なポジションですから、情報がちゃんと届かないと、経営者からすれば信頼できない。『これを出して』『なぜこの数字になっているの』と聞かれても答えられない。その背景には、実はスキルのミスマッチが最初からあったということが多いんです。職務経歴書は、きれいにいくらでも書けてしまいますから。実際にはできない、でも『できない』と言えないから隠そうとする」
山本社長
「もう1つはコミュニケーションです。専門的な仕事ではあるのですが、特に今はAIで正確な数字の処理はできてしまう。だからこそ、営業部門などとうまくコミュニケーションを取って、適切な情報を届けたり聞いたりすることの重要性が上がっています。ここが全くできないと、専門性があっても難しい」
AIの進化は、求人票の書かれ方そのものを変え始めています。
山本社長
「明確に変わったと感じることが2つあります。1つは、求人そのものの変化です。AIを導入できる、AIのディレクションができる。そういう求人がものすごく増えました。募集のタイトルも『DX経理』といった言葉に変わってきています。みんな『AIに仕事を食われるのではないか』と心配していますが、どちらかというと、AIを入れられる人がものすごく求められているんです」
山本社長
「もう1つは、リスクの高い人を採らなくなってきたことです。AIでできることが増えて、今は自社に入っていなくても、いずれ必ず入ると誰もが思っている。そうすると『処理が少しできる』ということよりも、人として感じがいい、話していて違和感がない、という部分の比重がめちゃくちゃ高くなっている。面接で違和感が少しでもあると、やめておこうとなるんです」
裏を返せば、長年の経験がそのままでは評価されにくくなる場面も出てきています。
山本社長
「『経歴20年です』という方でも、今まで紙でやっていた、このソフトを使うのが限界です、という状態だと、足かせになるかもしれないと思われてしまうことは、正直あります」
一方の柴田は、自身の判断基準は昔から変わっていないと言います。
柴田
「私が見ているのは、この方と一緒に仕事ができるかどうか。信頼関係を築けるかどうか。それだけなんです。あとは、中小企業の経営者は大企業に対して、どこかで引け目のようなものを持っているんですね。だから経歴を見て『この方ならできるだろう』と期待してしまう。でも大企業である程度の役職まで行くと、出来上がった仕組みを回すのが仕事になる。中小企業では、その仕組みを自分で作れるかどうかが問われます。ここが全然違うので、期待とのギャップが生まれやすい」
山本社長
「経歴や在籍していた会社が大手というだけで採用したくなるのですが、結局そこで期待ギャップが生まれるケースは、非常に多いですね」

前編のまとめ:バックオフィス採用でつまずく「3つの構造」
後手の採用が、定着しない採用を生む
いなくなってから動くと、焦りから見極めが甘くなり、引き継ぐ相手もいない。入社した人が「こんなはずじゃなかった」と感じる状態を、会社側が作ってしまっています。
最初の一人こそ、分かっている人の目を借りる
社長自身が経理を分からないため、うまいことを言うだけの人を採ってしまう。核となる一人が座れば、その後の採用はその人が見られます。だからこそ最初の一人は、領域を理解したエージェントや顧問と一緒に選ぶ価値があります。
守りを固めた会社が、攻めるときに強い
バックオフィスがしっかりしている会社は銀行からも評価され、出資や事業承継といった勝負どころで動ける。コストセンターではなく、攻めるための土台です。
後編では「即戦力と未経験、どちらを選ぶべきか」「AIが使えるとはどういう状態か」「AI時代に長く活躍する人材の見抜き方」を深掘りします。



