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1円のズレで全額否認!?役員報酬・賞与の損金算入ルール!知らないと恐ろしい「時期」と「手続き」の盲点!
法人税|役員報酬・役員賞与のルール
損金算入するための「時期」と「手続き」をわかりやすく解説
「社長の給料って、自由に決めても経費になるんですよね?」
実は、ここを誤解している会社は少なくありません。
そもそも法人税法では、原則、役員報酬(賞与を含む)は損金(経費)にならないと規定されています。損金(経費)になるのは、以下で説明する限定的なものとされているからです。
役員報酬や役員賞与は、従業員の給与とは違い、“いつ・どう決めたか”によって、法人税上「損金にならない」ケースがあります。
たとえば、
- 利益が出そうだから急に役員報酬を上げた
- 決算前に賞与を出した
- 議事録を作っていなかった
こうしたケースでは、税務調査で否認される可能性もあります。
とはいえ、ルール自体はそこまで複雑ではありません。
ポイントは、
「決めるタイミング」と「必要な手続き」
この2つです。
この記事では、役員報酬・役員賞与を損金算入するための基本ルールを、できるだけわかりやすく整理して解説します。
1.そもそも「役員報酬」と「役員賞与」は何が違う?
まずは言葉の整理から。
- 役員報酬
毎月支払う、いわゆる「社長の給料」です。
法人税では主に、定期同額給与として扱われます。
- 役員賞与
業績などに応じて支払うボーナスです。
ただし、役員賞与は従業員賞与よりも厳しく管理されており、原則として損金になりません。
一定の手続きを踏んだ場合のみ、損金算入が認められます。
2.役員報酬を損金算入するルール
役員報酬で最も重要なのが、「毎月同じ金額であること」です。
原則は「定期同額給与」
法人税では、役員報酬は毎月同額で支払う必要があります。
たとえば、
- 4月:50万円
- 5月:50万円
- 6月:50万円
このように一定額であれば、基本的に損金算入できます。
逆に、
- 4月:50万円
- 5月:80万円
- 6月:30万円
のように自由に変えると、税務上問題になる可能性があります。
3.役員報酬を変更できる「時期」
では、まったく変更できないのかというと、そうではありません。変更できる代表的なタイミングがあります。
- 事業年度開始から3か月以内に変更・支給
もっとも一般的なのがこれです。
新しい期が始まった後、通常は3か月以内であれば役員報酬の改定が可能です。
たとえば3月決算会社なら、
- 4月:新事業年度開始
- 6月末頃まで:改定可能
このタイミングで株主総会を開き、役員報酬を決定します。 - 役員の職制変更など特別な事情がある場合
たとえば、社長就任・専務から代表取締役への昇格・業務内容の大幅変更など、役員としての立場が変わった場合は、期中でも改定が認められるケースがあります。ただし、「利益が増えたから上げる」だけでは基本的に認められません。
4.手続きで重要なのは「株主総会議事録」
役員報酬は、口頭だけで決めるのではなく、「正式に決定した証拠」を残すことが大切です。その代表が、株主総会議事録・取締役会議事録です。税務調査では、いつ決めたか・いくらにしたか・誰が承認したかを確認されます。「実際には払っていたけど、議事録がない」というケースは意外と多いため注意が必要です。- 役員賞与は原則「損金にならない」
ここは非常に重要です。
従業員賞与は比較的自由ですが、役員賞与は原則として損金不算入です。
つまり、出しても法人税の計算上、経費にならないのが基本です。 - 役員賞与を損金算入する方法
代表的なのが、「事前確定届出給与」です。
これは簡単に言うと、「いつ・誰に・いくら払うかを事前に税務署へ届け出る制度」です。 - 事前確定届出給与のポイント
たとえば、12月に社長へ100万円支給と決めた場合、事前に届出を提出し、その通り支払えば損金算入できます。
逆に、金額が違う・支払日が違う・届出していない場合は、損金算入できません。 - 届出期限はいつ?
通常は、株主総会などの決議日から1か月以内
または事業年度開始から4か月以内のいずれか早い日までです。
この期限を過ぎると、損金算入が難しくなるため注意が必要です。
5.【重要】1円・1日のズレも許されない!実際にあった恐ろしい失敗事例
この「事前確定届出給与」のルールは、驚くほど厳格です。せっかく事前に届出を出していても、実際の支給額や支給日が「1円」「1日」でもズレると、税務上は全額否認されてしまいます。
ここで、実際にあった人為的ミスによる恐ろしい事例をご紹介します。
【実例:文字・数字の「打ち間違い」で多額の追徴課税に】
ある企業で、事前確定届出給与の手続きを適切に行い、税務署へも期限内に届出を済ませていました。しかし、実際に支給(振込)する際、社内の事務処理で**金額の数字を入れ替えて入力してしまうという「ケアレスミス(打ち間違い)」**が発生してしまいました。
税務署への届出額:〇,〇九〇万円
実際に支給した額:数字が一部入れ替わり、数百万円ほど過大に支給
その後の税務調査でこのミスが発覚。企業側は「届出手続き自体に不備はなく、単純な振込時の人為的ミスであるため、過大に支払ってしまった差額分だけを損金不算入(否認)にしてほしい」と主張しました。
しかし、国税当局の結論は**「支給全額の損金不算入」。 「届出と1円でも違えば、その支給全体の損金算入を認めない」というルールの通り、差額だけでなく役員賞与の全額が経費として認められず、非常に多額の追徴課税が生じる結果**となってしまいました。
この事例からもわかるように、事前確定届出給与は「手続きをすれば安心」ではなく、「届出通りに寸分違わず実行すること」がセットで初めて成立する制度なのです。
よくある失敗例まとめ
中小企業で特に発生しやすい失敗例をまとめました。
- 「利益が出そうだから決算前に役員賞与を出した」
事前届出がない決算直前の賞与は、100%損金になりません。 - 「役員報酬を途中で自由に変更した」
資金繰りや利益調整のために期中で支給額を上下させると、定期同額給与のルールから外れ、税務否認リスクにつながります。 - 「議事録を作っていない」
“決めた証拠”が残っていないと、実際に支払っていても税務調査で否認される原因になります。 - 「振込金額や支給日が届出とズレていた」
先述の事例の通り、単純な打ち間違いやケアレスミスであっても、差額だけでなく「全額否認」という最悪の結果を招きます。
実務上は「決算前」ではなく「期首」の設計がすべて
役員報酬・役員賞与は、「決算直前になって利益が見えてから動く」のでは手遅れです。「期首の段階でどう設計するか」がすべてを握っています。
特に中小企業では、会社の利益だけでなく、
- 会社側の法人税・社会保険料の負担
- 経営者個人の所得税・住民税・社会保険料の負担
- 会社のキャッシュフロー(資金繰り)
これらをトータルでシミュレーションし、バランスの良い金額を期首に決定する必要があります。
役員報酬・役員賞与で押さえておきたいポイントは、次の3つです。
- 役員報酬のルール
原則は毎月同額。改定は事業年度開始から3か月以内が基本。必ず議事録を保管する。 - 役員賞与のルール
原則は経費にならない。「事前確定届出給与」の届出が必要。 - 実行の厳格さ
事前確定届出給与は、1円の不一致も許されない。手続きだけでなく、最後の振込・支給まで徹底的に確認する。
最後に、役員報酬や役員賞与は、単なる「社長の給料」ではありません。法人税・所得税・社会保険まで複雑に関係する、会社経営の最重要テーマの一つです。
「今期は役員報酬を変更したい」「役員にもボーナスを出したい」「会社と個人、トータルで手残りを増やしたい」という場合は、決して自己判断せず、期首の段階で早めに税理士へ相談しながら進めることで、不要な税務リスクを確実に避けることができます。

