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【第2回】外国人労働者の労働社会保険の適用と労務管理 ~「知らなかった」では手遅れ!外国人雇用の盲点と経営者が負う【罰則】のリスク~
第2回 外国人労働者の労働社会保険の適用と労務管理
~「知らなかった」では手遅れ!外国人雇用の盲点と経営者が負う【罰則】のリスク~
第1回に続いての外国人雇用シリーズ第2弾。
前回は日本で働くことができる在留資格やトラブル防止の社内体制の大枠に触れましたが、今回は入社を取りまく労務管理を中心に解説します。
「外国人雇用は日本人と同じでいい?」「社会保険加入を拒否されたら?」
人手不足を背景に外国人採用が増える一方、経営者様の不安は尽きません。
外国人雇用には特有の盲点があり、見落とすと悪気がなくても「30万円以下の罰金」や「不法就労助長罪」など重い【罰則】を科され、会社の信用を失うリスクがあります。
本記事では社労士の視点から、賃金・社保の設定、入社手続き、週28時間制限など、行政手続きを踏まえ、経営者が絶対に押さえるべき実務の要点を分かりやすく解説します。
第1回を読む →1.日本の労働法はすべての外国人に適用される
労働基準法第3条では下記のように定められています。
『使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。』
最低賃金の遵守、時間外労働の割増賃金、休日設定、そして安全衛生管理…これらすべてにおいて、日本人労働者と同一の基準が求められます。
また、社会保険(健康保険・厚生年金)や労働保険(雇用保険・労災保険)についても同様です。これらは国籍ではなく、「日本国内の事業所に雇用されているか」「一定の労働条件(週の所定労働時間等)を満たしているか」という客観的な事実によって強制適用が決まります。
たとえば、「本人が社会保険に入りたがらないから加入しなくても良い」「外国人アルバイトには有給休暇を与えなくても良い」といった解釈は、法的には一切通用しません。なお、外国人従業員が例え不法就労であったとしても、労働基準法は適用されます。入社後に不法就労であったことが発覚したとしても、既往の賃金は全額支給しなければなりません。
2.トラブルを未然に防ぐ「雇用条件の設定」
1. 外国人も雇用保険・社会保険は日本人と同じ基準
入社にあたっては、日本人同様に働く時間等に応じて雇用保険、社会保険の加入手続きが必要です。「外国人だから不要」といった運用は違法です。たとえ本人が手取りが少なくなることを理由に加入を拒否しても、各種保険の加入は事業主の責務。年金事務所の調査の際は、未加入期間を遡っての加入を求められますし、社会保険の未加入の履歴は、特定技能・技人国等の在留資格更新の不許可事由になる可能性もあり本人にも大きく影響します。
「社会保険に入りたくない」と言われたら?
*よくあるケース・・・「手取りが減る」「将来日本にいないから年金はいらない」
→義務であることと、「病気やケガ、出産で会社の仕事を休んだときは出産手当金、生活保障のための傷病手当金の給付があること」、「日本の健康保険では医療費が3割負担で済む!(海外の高額医療費との違い)」というメリットや、「帰国時には年金保険料の一部が戻ってくる!(脱退一時金)」などを、説明してみましょう。
★脱退一時金については次回詳しく解説します★
2.最低賃金を払っていれば大丈夫?
「物価の安い国から来ているから給料は低くてもいいだろう」、「いくらでもいいから働きたいと言っている」思い込みや本人の言葉をそのまま捉えて、最低賃金より低い額になっていませんか?外国人であっても最低賃金法が適用されます。ここは絶対守らなければいけない最低ラインです。
では、「最低賃金さえ払っていれば大丈夫」かというと、答えはNoです。
冒頭の国籍差別の禁止の他、仮に、外国人が契約社員であった場合、短時間・有期雇用労働法等により、通常の労働者との間に不合理と認められる格差を設けることはできません。また、出入国在留管理庁(入管)は、最低賃金ではなく「日本人との比較」を厳格にチェックしています。
【出入国管理及び難民認定法(入管法)の基準】
外国人が受ける報酬の額が、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」でなければならない。(※「技術・人文知識・国際業務」の上陸許可基準、および「特定技能」の省令等に明記)
自社の賃金規程に賃金の記載があれば、それに沿ったものであること、同じ職務内容の日本人と同等の給与を支払う事が必要です。技術、技能に差があるなど合理的な理由がない場合に、国籍等を理由に、外国人の賃金を下げたり、その他の待遇を低くすることは法令違反になります。
また、「賃金が低い」との事で、転職や帰国を希望するケースも発生しています。同業他社での賃金水準を参考にすることは、日本人同様必要なプロセスです。
3.給与の説明を丁寧に ~信頼関係の第一歩
自国に社会保険制度がない、あるいは強制加入ではない国の出身者の場合、給与から数万円単位で控除されることに驚かれる場合もあります。実際の給与明細を模した「手取りシミュレーション」を見せることで、入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができます。しかし、シミュレーションはあくまで試算です。手取りの保証ではないこともしっかりと説明しておきましょう。
【主な控除項目】
- 社会保険料(健康保険・厚生年金)
- 雇用保険料
- 所得税・住民税
- (もしあれば)社宅費・光熱費など
POINT→住民税は前年の所得に応じて決定されるため、日本に来た最初の1年間は控除されません。2年目以降に控除が発生することは、事前に必ず伝えてください。これを伝えていないと、2年目に急に給与を減らされた、会社に騙されたと不信感を抱き、突然の離職に繋がるリスクがあります。
3.外国人雇用ならでは。手続き注意点
いよいよ入社!入社時に必要な手続きについて外国人雇用ならでは。のポイントを解説します。
1.忘れると大変!!
外国人雇用状況を届出する・・・「在留カード」情報は必須
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律に基づき、外国人を雇用するときは、「外国人雇用状況の届出」が必要です※。短期のアルバイトも対象なので注意が必要です。
万が一、届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。ただし、氏名や言語などから外国人であると判断できなかった場合は、確認・届出をしなかったからといって、法違反を問われることにはなりません。
(※特別永住者と在留資格が「外交」「公用」の場合は、届出の対象とはなりません)
雇用保険の加入者
日本人と同じように「週20時間以上の勤務」かつ「31日以上の雇用見込み」がある場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」にて届出を行います。
追加で必要となる記載事項
〇氏名(ローマ字)○国籍・地域 ○在留資格 ○在留期間 ○資格外活動許可の有無〇在留カード番号
雇用保険の取得届の備考欄に記載していつも通りハローワークへ提出することで、同時に外国人雇用状況の届出を行ったことになります。
2.雇用保険未加入者(週20時間未満)
「外国人雇用状況届出書」に必要事項を記載して提出します。保険に入らないとついつい忘れがちなので要注意です。入社時だけでなく、離職時も提出が必要です!それぞれのタイミングでの在留カードの情報の記載が必要なので、しっかり在留情報を管理しましょう。
2.年金はローマ字登録を行う
外国籍の方で、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない方、個人番号制度の対象外である方については、社会保険資格取得届等とあわせ「厚生年金保険被保険者 ローマ字氏名届」の提出が必要です。ローマ字は在留カード(パスポート)と同じように記載を行います。将来、帰国する際、年金を受給する際に漢字やカタカナだけの登録だと本人が特定できず、年金記録が宙に浮いてしまうというトラブルを防ぐための手続きになります。
3.マイナンバーの収集と管理
日本に住民票がある外国籍の方は、日本人同様マイナンバーが付与されています。雇用保険、社会保険には原則マイナンバーの記載が求められます。日本に来たばかりの場合、通知を待っているがなかなか届かないというお声を耳にしますが、自治体によっては2週間~1ヶ月ほどかかるようです。
その場合は、市区町村で「住民票(マイナンバー記載あり)」を即日発行してもらうよう依頼することが、手続きを遅延させないコツです。
4.経営者が知っておくべき週28時間の落とし穴!
前回記事でもふれた、留学・家族滞在のビザにおける、「資格外活動許可(原則週28時間以内)」この週28時間には厳格な制限があります。
- 月曜日~日曜日など固定の曜日の1週間ではなく、「どの時点から数えても連続する7日間の合計」が28時間以内
- 複数のアルバイトも全社合計する
自社に対象者がいれば、改めて確認してください。他社の状況は本人しか分かりません。本人にもしっかりと説明し、自覚を持ってもらうことが大切です。そして、面談時に『他社での勤務状況に関する申告書(誓約書)』を提出してもらうなど、会社としての防衛策を講じることが重要です。
ただし留学の場合、在籍校の長期休業期間中に限り「1日8時間以内・週40時間以内」まで認められます(家族滞在には適用されません)。
!週28時間を超えていたらどうなる?
不法就労とみなされるリスクがあります。本人は在留資格の取り消しや次回の更新拒否、悪質な場合は強制退去の対象になる可能性もあります。
会社も働くことが認められていない外国人を雇用したとして「不法就労助長罪」が適用され、令和9年(2027年)4月1日以降は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(併科可)」と罰則も重く、新聞記事になることさえ起こりえます。
忙しくて気が付かなかった、知らなかったでは済まされません。会社の信用問題にも影響する重大事項との認識を持って、すぐに対応を行うことが必要です。
外国人労働者の雇用は、企業にとって単なる労働力の確保ではなく、多様な価値観を社内に取り入れる大きなチャンスになります。しかし、日本人と異なる手続きや管理が必要となり、そこには知らなかったでは済まされない重い罰則の「盲点」も潜んでいます。
入社手続きや日々の労務管理は、単なる書類のやり取りだけではありません。外国人労働者の「日本での生活に対する不安を、安心感に変えるための最初のサポート」です。法令を正しく守り、一つひとつの仕組みを納得いくまで共有することが、結果として外国人、日本人問わずエンゲージメントの高い組織づくりへと繋がります。
「うちは本当に大丈夫だろうか」と少しでも不安に感じたら、大きなトラブルに発展する前に、ぜひミカタ社会保険労務士法人へご相談ください。
次回は退職・帰国時の実務(脱退一時金・離職届出等)を解説予定です。
ぜひあわせてご覧ください!


