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【社長対談 第2弾・後編】走りながら考え、ダメならすぐ撤退。45年続く会社の"諦め力"と"嗅覚"
ミカタ社長対談
〜顧問先社長 × ミカタ社長、経営者の"見方"が変わる話〜
経営者の「生の声」を届けるコンテンツとして、「心の豊かさ」「体験としてのプロセス」「中小企業の社長」——人間にしかつくれない価値を、ミカタ代表・柴田とミカタの顧問先社長が語り合います。
現場知と問題意識を通じて、全国の中小企業経営者に届けたい。それがこの対談シリーズの願いです。
ゲストのご紹介
【社長対談 第2弾・前編】学生起業から45年——"やりたいから動く"が、会社を生き残らせた
前編では、株式会社ホワイト・ベアーファミリー代表取締役社長近藤康生氏をゲストに迎え、経営者の「嗅覚」と「決断力」について深堀いたしました。
前編では、学生起業から45年・ITを「嗅覚と決断力」で使いこなす近藤社長の経営スタイルをお届けしました。後編では、コロナ禍の民事再生という経営の危機をどう乗り越えたか、インバウンドという打ち手がなぜ機能したか、そしてインフレ時代に中小企業が取るべき行動とは何か。ミカタ税理士法人・柴田代表とともに深掘りします。
インバウンド対策は、旅行業としては「当然やること」。ただし構造を知らなければ、儲からない
インバウンドに躊躇する経営者もいる中、近藤社長は「躊躇するという感覚がよく分からない」と率直に語ります。しかしその言葉の裏には、誰も教えてくれない「落とし穴」が隠されていました。
近藤社長
「インバウンドはもう切り離せない業種なので、10年以上前からどうやってビジネスに結びつけるかをやってきました。ただ、旅行業においてはインバウンドではっきり言って儲かることは少ない。どうしてかというと下請け構造になりやすいからです。日本を訪れる外国人の旅行では、出発する国の旅行会社がイニシアチブを取る。受け皿の日本にいる旅行会社は安く叩かれるし、相見積もりも取られる。自分たちの商品が作りにくい構造になってしまっているケースがほとんどです」
では、どこで稼ぐか。近藤社長の答えは明快でした。
近藤社長
「儲かるのは一つ、ホテルです。外国人がぜひ泊まりたいと思う宿泊施設を作れば、むちゃくちゃ利益が出る。
昨年M&Aで買収した志賀高原の東館ホテルで、スキーシーズン約120日間を徹底して外国人を取りに行く戦略に変えました。前オーナーの売り上げの倍、利益は5倍になりました。日本人の客単価は1泊2食2万円前後ですが、外国人は5万から7万円。香港やシンガポールのファミリー層、富裕層がメイドを連れてきたりします」
一方で、インバウンドには「カントリーリスク」がつきまといます。
近藤社長
「中国と台湾だけでも動向が違うし、欧米とはまったく違う。それぞれの国の都合によって来る時期も目的も使うお金も違う。
そしてコロナで一気に止まるということがありました。インバウンドを急拡大してホテルを展開したことが、弊社が今回、民事再生に至った遠い原因の一つでもあります」
国策でインバウンドの旗が振られた2014〜15年頃から流れを読み、先んじて投資した。しかし「正しい見立て」が「正しいタイミング」と一致するとは限らない。それが経営の難しさだと近藤社長は言います。

その中でも「志賀高原」というエリアを選んだ理由。「これからだからその前に、入る」という逆張りの発想
現在、長野のスキーリゾートで外国人に人気なのはニセコ、次が白馬、そして野沢です。志賀高原は、まだ「これからの状態」。
近藤社長
「白馬はコロナ後に地価が5倍になりました。白馬はもう高くなりすぎて手が出せない。ならばどこかと考えたときに、「志賀高原」はどうだろうと、そこは観光や旅行という地域ではまだ「これから」の状態。であればまだ勝機がある。ただそこに外国人が集まる条件を作れるかどうか——アクセスの整備、英語対応のコンシェルジュ、完全送迎、価格設定。それを整えていくことが次の課題だと思っています。」
シンプルな「なぜ」を押さえ、先に動く。これが近藤社長の決断の核心です。
もっとも、近藤社長が不動産に踏み出したのは、戦略的な判断だけが理由ではありません。「元々不動産が好きだった」と社長は言います。平成元年頃からホテルや収益物件を個人で買い始めており、不動産への関心は旅行業と並走するかたちでずっとあり続けました。民事再生後に旅行業一本から脱却しようと不動産仲介・ホテルM&Aへと踏み出したのも、その延長線上にあります。観光業はコロナのような外的ショックで一気に止まる。だからこそ「リアルな資産を持つ」ことへの確信が、近藤社長の中で年々深まっていきました。柴田代表はこの視点を、より広く中小企業経営者全体に向けて語ります。

インフレ時代の「資産の組み換え」。現金を持ち続けることのリスク
インフレ・人件費上昇・金利上昇という三重苦の中、柴田代表はこう語ります。
柴田
「この30年間、日本の中小企業経営者が預金に置き続けたのはデフレ下では正しかった。でも今はインフレ率2〜3%、実質金利は1%。100億円持っている人が年2億円減っていく時代です。賢い投資にお金が動く。そしてもっと大切なのは資産の組み換え。日本人は買ったら売らない。使わなくても売らない。その資産が本当にお金を生んでいるかどうかという視点で見直す時期に来ています」
一方で「投資の落とし穴」についても、柴田代表は率直に警鐘を鳴らします。
柴田
「会社は赤字で潰れない、資金がなくなって潰れる。上手くいっている時はキャッシュフローが潤沢だから借りてレバレッジ投資もできる。だけど、その許容度のバランスが難しい。コロナも震災も火災も熊も、予期せぬことが起きる。そういう時にこれだったら大丈夫、という余力を財務の専門家と相談しながら実行してほしい」
近藤社長もこの点について、身をもって経験しています。過去に民事再生という経営危機を乗り越えた近藤社長にとって、「続けるべきか、手放すべきか」の判断は体で覚えたものだといいます。走りながら考え、ダメだと分かればすぐ方向を変える。その決断の速さが近藤社長の経営の特徴です。そしてその判断力は、のちの民事再生という最大の局面でも、会社を再建へと導く力になりました。
民事再生を唯一乗り越えた旅行会社。早期の事業承継対策が命綱になった
旅行業界でコロナ禍に法的整理を経験した企業は複数あります。しかし民事再生で再建し、元のオーナーが経営に戻った事例はそうそうある事例ではないと思っています。その背景に、ミカタ税理士法人との長年にわたる伴走支援による「対策」がありました。
近藤社長
「1番ありがたかったのは、グループの再編を大局的な目で相談できたことです。持株会社を作ったり、会社を分割・合併したり、そして相続対策・事業承継の仕組みを早くから取り組んでいた。法的手続きを踏まざるを得なくなった時にも、既にそういう体制が整っていたので、今のもう一度、私がオーナーとして返り咲くことができた」
また、創業時に父親(税理士)から言われた「小規模企業共済」への加入も、個人資産を守り抜く「最後の砦」になりました。
近藤社長
「創業時に親父に言われたんです。これな、破産しても守られるから満額入っておけと。当時は最高5万円で、7万円になってからも満額入り続けた。民事再生の手続きで、積み立てた全額が守られた。これが1番ありがたかった。柴田先生の顧問先にもぜひ勧めていただければ」
柴田代表が37年で見てきた「走りながら考える経営者」「満足しない経営者」。近藤社長はその典型です。そして正しいアドバイスを聞いて実行し続けたことが、最悪の局面でも「戻ってこられた」理由でした。

経営者へのメッセージ。「死ぬまで仕事をする」ことが原動力になる
インタビューの最後に、二人から中小企業経営者へのメッセージが語られました。
柴田
「37年間、平穏無事で何もなく毎日安心、という時期はなかった。バブル、阪神淡路、リーマン、東日本、コロナ、今もインフレ……その時々に大変だった。でも絶対言えるのは、中小企業はマーケットシェア率がそんなに高くない。人口が減っても、まだ創意工夫で伸ばしていける。皆さんが萎縮しているときがチャンスです。次の10年、一緒に会社を伸ばすお手伝いをしたい」
近藤社長
「古稀を過ぎて、同窓会では引退した仲間も増えてきた。でもオーナー社長は死ぬまで仕事ができる。それが一番恵まれているところだと思っています。死ぬまで勉強する、死ぬまで前向きにやる。その気持ちを持ち続けることが原動力になる。偉そうに言えることはあまりないけど、そういう自分にチャレンジしながら毎日仕事に取り組んでいます」
後編のまとめ:人口減少・インフレ時代を生き抜く「3つの行動原則」
インバウンドは「下請け」ではなく「自分の宿」で稼ぐ
旅行の下請けでは儲からない。外国人が泊まりたいと思う宿泊施設を持つことで、客単価は日本人の2〜3倍になる現実がある。
現金は「置いておくだけで損する」時代。資産の組み換えを今すぐ
インフレ下では資産が目減りする。持っている資産がお金を生んでいるかどうかを見直し、財務の専門家と連携しながら組み換えを図る。
最悪の局面に備える「余力」を設計する
コロナ、震災、火災。いつ何が起きるか分からない。上手くいっている時こそ、財務の専門家と許容度のバランスを確認することが、会社を守る最善の備えです。
株式会社ホワイト・ベアーファミリー様の45年の歩みを振り返ると、会社の命運を左右する局面において、「環境適応」と「早期対策」が重なったとき、企業は生き残ってきました。変化は脅威ではなく、準備を重ねてきた経営者にとって、最大の機会になる——そのことを、創業からの45年の実践が証明しています。



